10/15 Tunakkay

本日はグー・タオデイ。2011年の山形で見た人みんなに勧められた『オルグヤ、オルグヤ……』と『雨果の休暇』。狩猟民族として生きる術を断たれたエヴェンキ族の人々は、皆酒に溺れている。街の学校へ息子をやった母親、その息子の帰郷、民族の未来を考えてトナカイの放牧産業を計画する酋長の息子の姿などが描かれる。
特に改めて書くまでもなく、皆の勧めどおりおもしろい。アイデンティティが奪われた人々の凄惨な状況を見つめる視線に込められた偉大なるユーモア。そして酋長の息子が歌う歌や、口琴やハーモニカの音楽、そして母親の弟の描く絵画や詩。それらは彼らの先祖たちが奏でたものとは同じではないが、共通するモチーフを用いて失われた旋律や光景に再度息を吹き込む創造行為である。

そしてその2本の続編となる『最後のハンダハン』。もはやここまでくるとエヴェンキ族版「北の国から」みたいな感じになってくる。連作を通じて、彼らの居住地や山のキャンプは、観客が何度も繰り返しそこへ帰って生きたいような場所になる。
今作の主人公は、雨果少年の叔父にあたる人物で、部族の中でもハードコアなアルコホリックとして描かれていた人物。前二作でよく、酒ばかり飲んでないで働けと殴られたりしていた彼は、狩猟が禁じられた狩猟民族をおそった虚無感を象徴的に体現する人物だ。酒に溺れた部族を「サムライが腹を切るのと同じようなもの」だと形容する彼が、母親がインターネットで行ったお嫁さん募集キャンペーンを通じて、山を出て海南島のかなり可愛い奥さんの元で暮らすことになる。もはや山の中で姿すら見ることもできなくなった最大の獲物ハンダハン=ヘラジカと、狩猟の黄金期を夢に思い出しながら巨体を持て余してゴロゴロしている彼の姿が重なる。
まったくの余談だが、トナカイはいい。アイヌ語の名前が流通してるところも、シカの仲間で唯一オスメスともに角が生えるところもカッコイイ。オスの顎髭みたいな毛も、くるぶしあたりがフサフサしてるのも、オシャレだ。