journal

« November 2006 | メイン | January 2007 »

December 31, 2006

《再録》AAについて

[ cinema ]

(2006年12月31日発行「nobody issue24」所収、p.52-54) 「かれの内部で言語を破壊したものが、かれに言語を使用させるのである」 ――モーリス・ブランショ  『AA』、このどのような意にも取れまたどのような意にも取れない題名を持った、6章からなる映像を目の当たりにしている間、絶えず私のなかに湧き起こっていたのは、おそらく嫉妬と呼ばれる感情ではなかったろうか。このように不明瞭...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:48 PM

December 17, 2006

『スキャナー・ダークリー』 リチャード・リンクレイター
結城秀勇

[ cinema , photo, theater, etc... ]

フィリップ・K・ディック『暗黒のスキャナー』(この映画の公開にあわせて『スキャナー・ダークリー』と改題した新訳も書店に並んでいる)の映画化である。『がんばれ!ベアーズ』を、秀逸にとは言わないまでもそつのない出来にリメイクしたリンクレイターだけに、今回も『暗黒のスキャナー』という小説には何が書かれているのかがよくわかるような出来になっている。つまり原作を読んだ方がはるかに面白い。映画をその原作となっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:37 PM

December 15, 2006

『クルマ少年が歩いた横浜60年代』菊池憲司
梅本洋一

[ book ]

 先頃「カー・グラフィック」誌を定年退職したライター=フォトグラファーの菊池憲司が、少年時代から撮り貯めたクルマの写真を集めた書物。菊池は横浜生まれで、この写真集には60年代初頭のクルマと横浜がたくさん写っている。  『建築を読む』(青土社刊)──乞うご愛読──を準備している間から、ぼくはこの種の写真集を見続けて飽きることはなかった。この写真集も、表紙になっている英国ナンバーを付けたオースティン4...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:55 PM

December 13, 2006

『硫黄島からの手紙』クリント・イーストウッド
梅本洋一

[ cinema , photo, theater, etc... ]

 イーストウッド自身の説明によればアメリカ側から硫黄島を描いたのが『父親たちの星条旗』、日本側からが『硫黄島からの手紙』ということだ。だが、この2作は、同じ戦争の両面を描いたものではない。『星条旗』が「英雄」たちの後日談を中心に描かれたのに対して、『手紙』が描くのは、硫黄島の戦いではあるけれども、そして守備隊長の栗林中将(渡辺謙)の話でもあるけれども、それらは口実に過ぎず、単に生きることと死ぬこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 AM

December 12, 2006

チェルシー対アーセナル 1-1
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 もしフットボールに判定があれば、明らかにチェルシーの判定勝ちのゲーム。アーセナル・ゴールのクロスバーやゴールポストに何度シュートを止められたことか。しかし、結果は1-1のドロー。これがフットボールだ。  より詳細に見れば、このゲームは、両チームの現在の姿を浮き彫りにしている。まずホームのチェルシー。バラック、シェフチェンコの両雄の加入は、このゲームでもまったく何の効果もない。後半にロッベン、ショ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:42 PM

December 11, 2006

『トゥモロー・ワールド』 アルフォンソ・キュアロン
茂木恵介

[ cinema , sports ]

 渋谷のスクランブル交差点を歩いていて、ふと行き交う人を見渡すと、こぞって白いイヤホンを耳に着けている。それをちらっと観ながら、「一体、何を聴いているんだろう」と、ふと気になったりもする。視線をQ-FRONTの方に向けると、クリスマスが近づいていることを知らせる映像やら年末の音楽イベントへの予習ともいうべきPVが映っている。 「18年間子供が生まれていない」。2027年のイギリスにおいて、人類の希...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:44 PM

December 6, 2006

クロード・ジャド追悼

[ cinema , cinema ]

 数日前朝刊の死亡欄の片隅にひっそりとクロード・ジャド死去の記事が掲載された。58 歳とあった。ぼくらが初めて彼女を見たのはトリュフォーの『夜霧の恋人たち』だったから、当時、彼女は20 歳。現実の年齢と役柄の年齢は一致していたようだ。もちろんヒッチコックの『トパーズ』や熊井啓の『北の岬』にも彼女は出演しているけれども、ジャン=ピエール・レオーがアントワーヌ・ドワネルであるように、彼女は、ぼくらにと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 AM

December 4, 2006

関東大学ラグビー 早稲田対明治 43-21
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 結論から書いてしまえば、早稲田の圧勝。対抗戦43連勝などという記録はどうでもよい。他が単に弱いと言うこと。ゲーム全体の印象は、早慶戦の方が面白かったということだ。この日の早稲田は出来が悪かった。特に曽我部の出来は悪い。キックがブレ、パスを2度もインターセプトされ、自らのラインブレイクも見られなかった。五郎丸の3トライも個人技とゴッツァンによるもの。早稲田が明治を崩して取ったトライは、権丈がライン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 AM

December 2, 2006

『おじさん天国』いまおかしんじ
渡辺進也

[ cinema , sports ]

『たまもの』、『かえるのうた』に続くいまおかしんじ監督の劇場公開作。前の二本が銚子、下北沢と撮られた場所が重要視されていたように感じられたのに対して、『おじさん天国』ではむしろどこと特定できないような、そして地獄が隣り合わせにあるようなファンタジックとも思えてしまうような場所として設定されている。 冒頭、「大波小波も軽々と」と童謡ともポップソングともつかない歌が流れている。後にそれはハルオ(吉岡睦...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:23 PM

December 1, 2006

『ナオミ・ワッツ プレイズ エリー・パーカー』 スコット・コフィ
結城秀勇

[ cinema , sports ]

ひとりの女優がハリウッドの街中を駆け回る。『ナオミ・ワッツ プレイズ エリー・パーカー』は、現代における女優という職業についての幾分戯画化された、だがそれゆえ核心に触れるドキュメントである。実際には彼女がその職業であり続けるための「仕事」を得るために駆けずり回り、そして結局はその「仕事」が、カフカの「城」めいた現代の迷宮の中で決してたどり着けない場所にあるのだとしても。 彼女はその実体もよくわから...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:31 PM