Crew of "THE COCKPIT"

©Aichi Arts Center, MIYAKE Sho
L to R)Hi'spec、OMSB、VaVa、Bim、Heiyuu

『THE COCKPIT』はその被写体であるミュージシャンたちのバックグラウンドを単純に暴き出すような態度を選ばない。このフィルムは(そしてその作り手たちは)、ある種の対象に対する饒舌さというものが、目の前で起きている出来事それ自体への私たちの視点を曇らせてしまうことを、十全に知っているのだ。しかしそれは言い換えれば、私たちの好奇心を煽りたてる刺激的な空隙を、つまり私たちにとっての「未知」との遭遇を、このフィルムが意識的に準備してくれているということでもあるだろう。このフィルムの出演者たる「クルー」たちの「未知」なる相貌について、以下ほんの少しだけ掘り下げて紹介したい。

このフィルムの「主人公」たるOMSB(オムスビ)は、アメリカ合衆国・ニュージャージー州生まれ、神奈川育ちのラッパー/トラック・メイカー/プロデューサーで、2009年にSIMI LABを結成。SIMI LABはこれまでに『Page1:ANATOMY OF INSANE』、『Page2:Mind Over Matter』の2枚のアルバムをリリースしており、いずれも大きな話題を集め、たとえば菊地成孔率いるDCPRGほか、さまざまなアーティストへの楽曲提供・客演参加も積極的に行っている。OMSBはそれと並行してソロ作『Mr. "All Bad" Jordan』、インストビート作品集『OMBS』 をつくりあげ、そして先日待望の2ndソロアルバム『Think Good』がリリースされたばかり。

そのOMSBが絶大な信頼を寄せるのが同じSIMI LABのDJ/トラックメイカーを担うHi'Spec(ハイスペック)。SIMI LABはこれまでもたびたびユニット内のメンバーが入れ替わっているが、Hi’Specはそのユニット立ち上げ以来のメンバーの一人。すでに入手困難な作品だがSIMI LAB内での派生ユニット作品「「Round Here : Mix Tape」では全編のミックスを務めた。

SIMI LABは、PSGのPUNPEEも属するヒップホップ・レーベルSUMMIT(http://www.summit2011.net/に所属している。『THE COCKPIT』のもうひとりの「主人公」と言えようBim(ビム)のTHE OTOGIBANASHI'S(O'S BOYS)もまた同レーベルに属し、2013年にアルバム『TOY BOX』をリリースした。

またBimはCREATIVE DRUG STORE(http://creativedrugstore.comの中心メンバーのひとりとしても活動しており、VaVa(ヴァヴァ)Heiyuu(ヘイユー)もまたそのメンバー。VaVaはDJ/トラックメイカーとして、Heiyuuはプロモーション・ヴィデオの撮影を手がけるほかLiveの際にはVJも担当している。

SUMMITとCREATIVE DRUG STOREはもちろん異なった組織であるが、そのふたつの間を自由に行き来することで、フレッシュなクリエイションの環境を生み出すことが彼らには日常になっている。つまり彼らひとりひとりの関係の至る所に「COCKPIT」は存在するのだ。

文=田中竜輔

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