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February 1, 2004

1st CUT 2003『海を探す』小嶋洋平

[ cinema , cinema ]

夏の田舎(どうやら茨城県らしい)で、日本ではあり得ないようなロメール的ヴァカンスをつくり出すには、35分は短すぎたのかもしれない。あるいは、少女の成長を記録するには35分は短すぎただろう。しかし、すべてのショットが何かの「象徴」でしかない1st Cutのフィクション作品のなか『海を探す』の忠実さはとても際立っている。では何に忠実なのか。ある男と少女がスクーターに乗るさまに、少女が自転車に乗るさまに、自転車と電車が並んで走るさまに、あるいは男と少女が出会うさまに、である。
たしかにそれらすべては、わたしたちの映画的記憶(疑わしい言葉だけど使わせてもらう)を刺激するだけの画面なのかもしれない。けどその忠実さは映画の快楽への忠実さでもある。それはやはり唾棄されるべきではない。
クリーニング屋は少女と男が出会うためにあり、小さな段差は、少女が自転車を降りて再びサドルに跨がるためにある。小さな罠が積み重なり、私たちは徐々に『海を探す』に浸されてゆく。「田舎」や「田園」のイメージを斥け、男と女と少女と、そして彼らのアクションだけを忠実に記録する。
小嶋監督は1st Cutのサイトで「次に撮りたい場所は?」の問いに「東京」と答えている。この困難への挑戦をぜひ見たいと思うし、その際にはぜひ偉大な失敗作をつくってほしいと思う。

松井宏