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April 6, 2004

FAカップ準決勝 アーセナル対マンチェスター・ユナイティド

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プレミアリーグでは開幕30ゲーム負けなし。チャンピオンズリーグでもベスト8に残っているアーセナルが、当然のようにFAカップでも準決勝まで勝ち上がり、マンUと当たった。
しばらく私の好みのこのチームについて書いていなかった。チャンピオンズリーグのグループリーグを勝ち上がって以来、このチームには順風満帆という四字熟語がふさわしかったからだ。昨年のような問題はない。コロ・トゥーレがセンターバックにコンヴァートされ、センターバックが安定し、ティエリ・アンリも絶好調でプレミアリーグのぶっちぎりの得点王、新加入のレジェスもチームになじみ、中盤には圧倒的な人材を抱えている。ときには退屈なゲーム運びもあるが、それでも負けない。プレミアシップはほぼ確実。ヴェンゲルのチーム作りも完成の域に近づいたように思えた。問題なのは、サッカーマガジンの粕谷秀樹が言うとおり、GKのレーマンぐらいのものだ。
そして、このFAカップ準決勝もゆっくりと見ようと思っていたし、事実、ゲーム開始直後から、エドゥのシュートがクロスバーをたたき、アーセナルが圧倒的に押していた。だが、32分にスコールズの強烈なミドルが決まってから、ゲームがおかしくなり始める。この日の2トップはベルカンプとアリアディエール。アンリを休ませている。押し気味なのに、なかなかシュートに持ち込めない。中盤はいつもの通りアーセナルが支配するが、そこからの展開に速度がない。ブラウン、オシェイ、シルヴェルトル、ガリー・ネヴィルの4バックが健闘しているとも言えるが、エドゥ、ピレスにパスミスが多く、リュングベリの動きも足りないようだ。頼みはベルカンプひとり。アリアディエールは完全に消えていた。
ヴェンゲルは後半15分からカードを切り続ける。まずピレスに代えて、温存したはずのアンリ、アイアディエールに代えてレジェス、そして不調のエドゥに代えてカヌ。ベルカンプを含めて一応FW登録を4人並べた。勝ちたいのだ。だが、ピレスが抜けてからパサーがいなくなり、エドゥも消えるとヴィーラしかパスを出せる選手がいなくなる。ベルカンプの運動量は後半から極端に落ちる。そして(これがヴェンゲルの悪いところなのだが)、決してパワープレイを選択しない。これでは点がはいるのは事故みたいなものだし、事実、中盤がマンUに潰され──だってヴィーラひとりだ──、速度と運動感のあるゲーム展開がまったくなくなってしまった。結局0-1でマンU。唯一可能性のあるタイトルに執念を燃やすマンUと悲願のチャンピオンズリーグ制覇を目指しているアーセナルのこのゲームへの執念の差が出たとも言えるが、この日のゲームを見る限り、(杞憂であってほしいが)どうもアーセナルの選手の動きが重いのだ。
まずシーズン後半の厳しい日程。リーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグ──これから中1日のゲームが続く。もし順当にゆけば、アーセナルは今シーズン60ゲームこなすことになるという。ほとんどが代表チームの選手であるアーセナルのレギュラーは代表のゲームと合わせると最低70ゲーム。そしてシーズン終了後はユーロ2004。信じられない! つまりアーセナルは、ガス欠だ。ターンオーヴァーできるほどの人材がないこのチームは、すでにA bout de souffle。とりあえず明後日のチャンピオンズリーグの対チェルシー戦を勝ち(ハイベリーのゲームを勝たねば今シーズンの意味はない)、その後のプレミアリーグで死んだふりをするしか、このチーム再生の道はない。皆、疲れている。選手たちも勝ち続けたいし、いちばん勝ち続けたいのはヴェンゲルだろうが、僕らが見たいのはアーセナルの勝ち続ける姿よりは、いちばん前衛的でパフォーマンスの質の高いフットボールであって、記録ではない。

梅本洋一