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July 15, 2004

キリン・カップ 日本対セルビア・モンテネグロ

[ cinema , sports ]

カップ戦とは言いながら、見ているとどうしても「親善試合」というフィーリングがぬぐえない。かつてなら、日本が外国チームと対戦するもっとも重要なイヴェントがキリン・カップだったが、すでに2度のW杯を体験したチームであれば、これはやはり「親善試合」なのだ。つまり、ディフェンディング・チャンピオンとして望むアジア・カップへの、そして開催中のW杯予選への調整ゲームなのだ。
田嶋技術委員長が語るとおり、このチームもだいぶチームらしくなってきた。ここまでずいぶん時間がかかったが、対イングランド、対チェコ戦の好結果が、すこしずつチームに自信を与えているのだろう。勝つことがもっともチームを成長させるという事実は、ユースでも代表でも同じことだ。チームらしくなったというのは、選手それぞれのタスクが明快になり、それらの組み合わせでチームの方向性が確定するという意味だ。このゲームで唯一の得点シーンになった、福西、鈴木、遠藤の連携は、評価しておくべきだろう。
だが、子細に眺めてみると、CSG(セルビア・モンテネグロ)のプレッシャーがきつかったのは、もっぱらターゲットになった鈴木に対してのみであって、中盤からバンバンプレスがかかってくるようなゲームではなかった(だから「親善試合」と言っている)。若手主体のCSGであり、ユーゴ解体以降、スロヴェニアやボスニアにも後れを取っているこのチームに、かつてのストイコヴィッチの栄光を重ねるのには無理があるし、名前が通っているのはミロシェヴィッチひとりのチームだ。つまり、「これからの」チームであり、その意味でメッチメイクは、明日の五輪代表の方がふさわしいとも思える。完成を目指しているチーム対方向性を探ろうとしているチームの戦いと言ったらよいか。
それでもやはりCSGの個人技は日本代表より優れている。パス回しにおどおどしたところが全くないし、ポゼッションからシュートというパターンは旧ユーゴそのままだ。だが、2トップとセンターハーフに比べて両サイドがやや弱い。つまり、アレックスと加治にチャンスがもっとあったろう。
日本の攻撃は、その全体を俊輔に頼っていた。ほとんどすべてのボールが俊輔を経由していた。ユーロを見たばかりだから、誰でもが思いつくだろうが、もし俊輔にマンマークが付いたら、このチームはどうなるのだろう。来るべきアジア・カップで日本はディフェンディング・チャンピオンなのだから、相手チームは、日本の長所を消しに来るに決まっている。すなわち俊輔にマンマークが付くのはほぼ確実だ。だが、このゲームで、俊輔が倒されるシーンは少なかったし、彼が前を向いてボールを受けられることが多かった。
その意味でこのゲームでの得点シーンになった福西からの展開は可能性を感じさせる。ボールがワンタッチで繋がり、遠藤がフリーになった。それに対して俊輔がボールを持つと、ワンタッチで繋がるのは後方へのパスだけ。足下でボールを貰いたがるので、アタックの速度を遅延させる。小野と中田がいないこのチームでは、やはり藤田か小笠原でいくしかない。鈴木にまずボールを預けるというワンパターンだけではアジアカップは乗り切れないだろう。大方の批評は俊輔を誉めているし、彼の出来自体は悪くなかったが、ここで書きたいのは、俊輔が持っているプレースタイルそのものに問題があるということだ。セリエでプレーしてもプロヴィンチア(田舎チーム)の10 番なら務まるだろうが、徹底したプレッシングを旨とするチームでは必要のない選手だろう。書き忘れたが、玉田はよかった。ゴールネットを揺らすことができなかったのは、相手キーパーの好守のせいだ。

梅本洋一