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August 21, 2004

日本代表対アルゼンチン代表

[ cinema , sports ]

プレミアリーグの04−05シーズンが始まり、チャンピオンズリーグの予備予選がすでに展開されているというのに、ベストメンバーからほど遠いアルゼンチンと日本の親善試合をわざわざ見るのは、他でもないリケルメの今を確認したいがためである。ただもちろん、アジアカップを手にした日本が、「二軍」とはいえ南米の強豪といかにわたり合えるかに注目していたのも事実だ。それは九月にワールドカップ一次予選対インドを控えているからだ。しかし、結論から言ってしまうと、1−2というスコア以上に失望する内容であった。
今の日本代表では数少ない「見れる」選手の一人、玉田は終始消えていたし、その玉田とツートップ組む鈴木はあいもかわらず芝の上に転げまわっている。トップ下にコンバートされた小笠原はボランチと重なる位置まで下がっていて、パスを捌けないばかりかポジショニングが悪すぎる。そのことに気づいていた最終ラインの宮本が前半何度も小笠原を追い越してオーヴァーラップしていたほどだ。小笠原はまずそのことを恥じなければならない。さらに、復帰したばかりとはいえ、中田浩はサボる癖がいまだに治っていない。ディフェンスラインのフィード力の低さも目立っていた。そして、両サイドアタックにいたってはもう言うのも憚られる。
ざっと挙げても、これだけの欠点が浮き彫りになってくる。ある水準以上の実力を持つナショナルチームと戦えば、決まって日本代表の技術の低さは露呈するし、システムは空中分解する。アジアでも接戦でしか勝てない今の日本代表が、この時期に、この相手と対戦する理由は何だったのか。初めから「海外組」を召集できないこともわかっていたはずだ。この代表ではアルゼンチンに勝ち目はないし、見るべきものもない。このメンバーでワールドカップ予選を戦うというのか。
しかし逆に、今の日本に何が必要か、それを皮肉にも対戦相手が示してくれた。それはアルゼンチンの両サイドアタックや、リケルメのプレーによってである。リケルメはニ三年前のテクニック主体のプレーを自粛し、ボールを簡潔に捌く現代的なサッカースタイルをとっていた。事実、アルゼンチンの二点目を演出したリケルメのアシストは別にスルーパスでも何でもなく、単に捌いただけのパスである。ボールを次々に捌くリケルメによって、アルゼンチンの攻撃は加速し、幾度となく日本のゴールを襲った。バルサでの挫折の後、リケルメがビジャレアルで復活した理由はこの捌くスタイルへの変貌にある。そしてこのリケルメを見ていると、「キラーパス」を数年前に棄てた中田英を思い出さずにはおれなかった。彼もまたボールを簡潔に捌き、ゲームをつくるタイプのプレーヤーになった。梅本洋一も指摘していた通り、やはり今の日本代表に必要なのは、ボールを持った状態でパスの出しどころを探し、攻撃を遅延させる中村ではなく、ボールを簡単に捌き攻撃を加速させる中田英だ。そして、五輪で一皮剥けた大久保がA代表に新しい風を吹き込んでくれるはずである。
私たちが見たいのは、目の覚めるようなアタックなのだ。それにはもちろんサイドアタックが欠かせないのだが、今の日本代表にそれは期待できない。ジーコはサイドを駆け上がるアルゼンチンの「二軍」選手を見て何を思っただろうか。何も思わなかったのなら、ドイツへの道は閉ざされる他ないだろう。

小峰健二