ラグビー テストマッチ
ウェールズ対ジャパン
[ music , sports ]
パリに住むラグビー好きの友人とメールをときどき交換している。パリでは放映のないウェールズ対ジャパン戦をDVDにして送ろうか、と申し出ると、健康に悪いのでいらないとのこと。スコットランド戦惨敗、ルーマニア戦敗北……。最後の1戦ぐらい「善戦」するかと淡い期待を抱いたが、友人の言うとおり、健康に悪いゲームになった。
98-0。トライ数14-0。つまりウェールズは奪ったトライをすべてコンヴァージョンした。ぬかるんだピッチにときどきミスも犯したが、来るべきシックス・ネーションズの開幕戦(対イングランド)のメンバーに残るために、手抜きはしなかった。だが、ウェールズは目新しいことはいっさいしていない。素早くボールにより、ブレイクダウンを優位に運び、ワイドラインから一気に攻めるか、ときにジャパンのファーストタックルが決まると、モールからゆっくり攻める。ひとりひとりが自分の「責任」(藤島大)をまっとうし、ひたむきにプレーをする。ウェールズがしたことはそれだけだし、つまり、それは、今年のシックス・ネーションズで好成績を収めるためには、どのような戦術を採るのかについてはまだ未定ではあるが、テストマッチである限り、ベストメンバーを送り出し、ナショナルチームの高潔さを守ろうとしていた。ベストメンバーではないウェールズXVは、一昨年、日本に遠征し、サントリーに敗れている。
一方わざわざ遠征に訪れたジャパンは、ディフェンス網の整備もできず(萩本光威監督は低く鋭いタックルと言っているが、対象は高校生のチームではない)、アタックは何も決めていないようだ(決まっているのかもしれないが、習熟している者は誰ひとりいない)。さらにベストメンバーを組んで、テストマッチの高潔さを守ろうともしていない(「今回は若手主体で経験を積ませる」勝田強化委員長)。おまえら選んでやったから勝手にやれ。しくじったら他の奴に代えるから。おまえらはまだ経験が足りん。強い奴にもまれてこい。強化、指導はもとより、スカウティングし、チーム戦術を作り、志気を高め、試合に臨ませるのが、コートや監督の役割だ。それらはすべて放棄されている。このスコアでは、若手の選手たちは自信喪失し、ヴェテランたちはやる気をなくし、首脳陣に対して残っていた一縷の信頼感をまったくなくす。
僕も業界こそ異なれ、指導者の端くれだ。若手は自信をつけなければ伸びない。ヴェテランは負けるかもしれないゲームを勝ちに持ち込める指導者を誰よりも信頼するものだ。若手に自信喪失させ、ヴェテランから信頼を得られない指導者は百害あって一利なし。だが、そういう指導者──この「国」の指導者も含め──こそ、自らの責任など想像の外側にあることもよく分かる。大西鐵之祐以来、日本のラグビー界に信頼のおける指導者は現れていない。1971年の暑かった9月、秩父宮ラグビー場でのジャパン対イングランド戦を覚えている僕は、とりあえず今日のゲームを見た後、ジャパンへの興味を失っている。70年代〜80年代の日本のサッカーと状況が似てきた。
今晩、イングランド対ワラビーズ、フランス対オールブラックスのゲームがある。エアチェックの準備だ。