ラグビー大学選手権決勝
早稲田対関東学院
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早稲田の清宮監督が就任以来4回連続同じカードになった決勝。結果から書けば31-19(トライ数5-3)。下馬評から考えれば関東が健闘した。法政にリーグ戦で敗れてからメンバーを入れ替え、特に田井中をFBに、有賀をセンターにコンバートした春口の采配が、このゲームでもある程度功を奏した。早稲田も決してアルティメイト・クラッシュではない。紙一重の勝利だ。まずは勝因、そして問題点を書こう。
勝因は、誰の目にも明らかなとおり、ラインアウトの完勝。逆に関東学院の敗因はラインアウトの完敗。ラインアウトを除けばFWはほぼ互角。スクラムもイーヴン。有賀、田井中、北川を有する関東のバックスがやや優勢だった。もちろん早稲田が奪った5トライの内4トライはバックスによるもので、この点では、早稲田のバックスが優勢だったという数字はあるが、これもまたラインアウトの完勝によって生まれたスペースの問題だろう。有賀を中心に関東のディフェンスは本当に頑張った。だが、関東のラインブレイクは、どれも個々の力によるもので、計算されたアタックはほぼ皆無で、これは、メンバーの入れ替えによるチームとしての熟成度の差だ(この点、この日の早稲田はまったくメンバーを入れ替えることなく、15人で戦ったことは覚えておくべきだろう)。ラインアウトをこれだけ奪いながら2トライ差しかつけられないことは、早稲田のバックスがまだまだ未熟であることも示している。
確かに大学のゲームは、トップリーグに比べると学年という枠があるので、毎年、同じチームは組めないが、早稲田の場合、FW8人のうち、7人までが昨年のチームにも出場していたので、熟成度の点では大きく上回ったのだろう。そして、バックスは、これまで試行錯誤が繰り返され、早明戦あたりからやっとメンバーが固定され始めた。後藤、安藤をハーフ団に定着させ、菊地、今村のセンター、内藤、首藤の両ウィング、そして五郎丸のFB。ゲームに出続けることで、それぞれの選手の能力が上がっていく。ここでも苦言を呈したことのある安藤のプレーは、落ち着きを増し、対同志社戦ではディフェンス、今回はラインブレイクの起点になり、両足で蹴るキックも判断が良くなった。後藤には何度もチョンボがあるし、このゲームでも後藤のパスをインターセプトされて一時は逆転を許したが、それでも──準決勝についての文章のラストに書いたが──関東の弱点がハーフ団にあることから、スクラムサイドを何度も破ったことは書いておこう。FWから生きたボールが何度もバックスに供給されながらも、アルティメイト・クラッシュできなかった原因が、このチームのもっとも大きな問題点、あるいは、トップリーグを含めての日本のラグビーに横たわる大きな問題なのではないか。
センターはクラッシュ、両ウィングも詰まるとクラッシュ。FWの寄りを待つ。その数秒間にディフェンス側もスペースを埋め、ボールがリサイクルされても大きなゲインは切れない。五郎丸──有賀を一発で倒したファーストタックルはよかったがその後のディフェンスは問題が残る──は何度かいわゆる半ズレ状態になったままノックオン。菊地も必ずゲインを切るがそこからラック。攻撃が寸断されるか、遅延する。これを解消するための方法はふたつあるだろう。ひとつは、ラインをもっとワイドにすること。もうひとつはオフロードだ。ワイドにしつつオフロード・パスが投げられればもちろんベストだ。つまり、ラインをもっとワイドにするということは、ポジショニングとフィットネス──受け手も長い距離を常に走るから──の問題であり、オフロードを実践することはスキルの問題だ。大学レヴェルでは、確実な戦術──つまりセットの安定──で勝てるが、ワイドとオフロードに目を向けないと、このチームが日本選手権でトップリーグに勝つことはないだろう。そして、これは重要なことだが、そのふたつを実践することはジャパン・ラグビーにとって、極めて重要なことだ。