サッカー:アジア地区最終予選 イラン対日本 2-1梅本洋一
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結果は敗戦であり、ワールドカップでは予選が一番面白いという定理を証明した形になった。アジア・カップではこうした展開でも奇跡的に勝ちを拾った日本だが、それは単に奇跡的だったからで、何度も続くものではないだろう。だが、勝負には負けた──確かにクオリフィケーションとしては痛い敗戦だが──が、日本はとても強いという印象を受けた。審判のジャッジも完全にアウェイで、もちろん10万の観客も完全にアウェイなのだが、それでも日本は実に落ち着いてゲームを展開したと思う。
前半26分のハシェミアンのゴールは事故のようなもので、どんなに堅守を誇っても1点くらいは入るもので精神的なダメージもなかったろうし、後半21分の福西の同点ゴールは美しいゴールだったから、全体的な意味でそれからポゼッションを中心にゆっくりとゲームを進めてもよかったはずだ。だが、その9分後に中澤の二重のミス──左サイドに出るのは中澤ではなく、宮本であってほしかった(クロスが入ると中央に高さが不足する)し、あれはコーナーでよかった──から再びハシェミアンのヘッドが突き刺さると、やはり焦りからかリズムが失われた。問題は、ここだろう。そこでジーコは、伸二に代えて小笠原。イエローをもらっているからという理由と、攻撃的なMFを3枚ならべて同点を狙うという意図は分からないではない。だが、このゲームの伸二は実に良かった。中央にドンと構え、配球役、そして、アタックを遅延させる役を見事にこなし、ときにはミドルを炸裂させた。たまたま2本とも惜しいシュートだったが、このチームのコンダクターは中田でも俊輔でもなく、まさしく伸二だった。代わった小笠原がシュートをダフり、良いところなくゲームを終えてしまった。
その他にも、このゲームでいくつかの誤算が重なっている。まずイランのフォーメーションを4-2-3-1と考え、4バックで望んだ日本だったが、実際は4-3-1-2であり、これなら3バックの方が適切だったろう。必然的に淳宏がバックラインに呑み込まれ、加治が余る形になり、右サイドからのアタックはかなり多くなった。すると問題が起こる。淳宏とマハタビキヤが対面になってしまい、必然的にマハタビキヤの前にスペースができてしまうのだ。常に両センターバックと淳宏は1対1を挑まれることになる。福西と伸二が必至でカヴァーしていたが、3バックだったら、中澤が引き出されても、中に中田浩二あるいは松田が控えていたから、決勝点は防げたかもしれない。次の誤算は玉田の不調だ。誰が見てもキレがなく、どこか体調が悪いのかとも思ったが、ジーコは玉田を後半17分まで引っ張る。福西の得点は後半21分に生まれている。
だが、これだけの誤算を重ねても、このチームは、ひょっとすると同点にするのではないかと期待させた分、ずいぶん大人のチームだ。気持ちを切り替えること。そしてジーコはもっとフレキシブルに選手を使うこと。このゲームも玉田の見切りをもっと早くしていたら、同点に終えたろう。