『THE INTERNATIONAL TUSSLER SOCIETY』インターナショナル・タスラー・ソサエティ月永理絵
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まずインターナショナル・タスラー・ソサエティとは何者か、という説明から始めよう。彼らは1989年に結成されたノルウェーの3人組バンド、モーターサイコのメンバーによるサイド・プロジェクトの名前であり、発表されたアルバムのタイトルでもある。インターナショナル・タスラー・ソサエティの発足のきっかけは、あるアメリカ映画、それもウェスタン映画のサントラ制作をてがけたことによるという。そのときサントラ盤として製作した『Tussler』というアルバムは、ノルウェーではずいぶん評判になったとか。その後ニール・ヤングやザ・デッドなどのカヴァーも収めた同名のレコードも発売している。モーターサイコとしては活動休止状態にある彼らが発表したのが、『Tussler』につづくカントリー・ウェスタン調の曲を、今度はすべてオリジナルでつくったアルバム、つまり『THE INTERNATIONAL TUSSLER SOCIETY』というわけだ。
ルーツミュージックやカントリーミュージックなどほとんど聞いたこともないので、そうした面から音をどうこう言うことはできないが、そんな知識のなさを笑い飛ばしてしまうくらい、彼らの音楽は底抜けに明るい。カントリー・ウェスタン・ミュージック、と言われても今いちピンとこないが、モーターサイコの新作とだけ言われればしっくりくるのかもしれない。モーターサイコの音楽はいつも肩書きなんて寄せつけないし、なんでもありと言いながらメロディーだけが常に優先されてきたように思えるからだ。
モーターサイコのCDの中で私が持っているのは2枚だけで、これまで彼らの音楽を真剣に聞いていたわけではない。ジャンルの区別なんてあってないようなものかもしれないが、モーターサイコの音楽をジャンル分けすることは本当に難しい。「雑食」という言葉がライナーノーツに書かれているが、彼らの音を表すにはぴったりな言葉だ。アルバムによってまるで音が違うし、1枚のアルバムの中でも、曲によってジャズやブルース、ロックやテクノなど様々な印象を受ける。だから1枚のアルバムを聞き終わっても、彼らのスタイルを発見することができない。だが彼らの音楽はつねに完璧なメロディーに支えられている。それぞれの曲ごとにスタイルが変化していても、彼らのつくるメロディーは一貫してポップだ。
そう、モーターサイコのアルバムは、まるでオムニバス・アルバムのようなのだ。それは『THE INTERNATIONAL TUSSLER SOCIETY』というアルバムでもまったく変わっていない。
*メンバーのうちドラムのGebhardtが先日脱退を表明したが、今年中にはモーターサイコ名義の新作が発表されるとのこと。