« previous | メイン | next »

June 24, 2005

ワールドユース 日本対モロッコ0-1
小峰健二

[ sports ]

 最後の試合になったモロッコ戦について。システムは4-4-2。カレンと平山のツートップ。もちろんこのシステムは長身の平山で制空権をとり、カレンがその平山の周りで「衛星」になるようにしたもの。あるいはこのチームでは有望な、左サイドの家永がエグって平山に合わせるパターンを志向したものでもある。一次リーグを見る限り、このシステムはほとんど変わらず、平山を中心にチーム作りをしたことが窺える。だが、ワールドユースの試合を見る限り、平山のポストプレーは相手に脅威を与えるものにはなっていない。
 もちろんモロッコ戦でも、それは絶対的なものではなかった。モロッコのDFはロングボールが入ると、ふたりで平山を潰しにかかる。ひとりは平山が跳ぶ前に体をぶつけ自由を奪い、足元にボールが入ると挟み込む。足元の弱い平山からは容易にボールを奪える。要は「教科書」通りのプレーをしたまでのこと。平山は完璧に消され、大熊采配の攻撃パターンはひとつなくなる。もうひとつのパターン左サイドアタックも、家永をふたりで追い込むことで、仕事をさせない。効果的なはずのサイドアタックは皆無になる。
 では、こうした局面をいかに打開するか。これは、絶対的な選手のいないチームではフレキシブルな采配以外にない。大熊監督がすべきだったこと、それは早々に平山に見切りをつけ、前田か本田と交代させることだった。なぜなら、モロッコのDF陣はボールウォッチャーの嫌いがあったからである。モロッコはボールをキープしている選手には連動してプレッシングを上手くかけれるが、その分DFの裏側にスペースを作ってしまう。そのスペースに走りこめる選手が日本の前線には必要だった。大熊監督はモロッコの穴を即座に見極め、そこを突くべきだったと思う。実際、前田が投入されてからは、右にスペースが空き始め、そこを突いた攻撃ができるようになった。だから、家永を引っ込め前田を入れるより、平山を下げランニングゲームを展開すべきだったのではないか。そうすることで、モロッコの大きく空いた中盤でボールを回すこともできただろうし、梶山を中心に幅広い展開と攻撃を仕掛けることもできただろう。

 このチームには95年の中田や99年の小野のような絶対的な選手はいなかった。それは確かなことだが、ならばそれなりのチームを作り、采配を施すのが大熊監督のやるべきことだったように思う。モロッコは決して「世界レベル」ではなかった。「世界レベル」を体感させることがワールドユースに出場する意義であり、狙いだと言うならば、モロッコのような相手から確実に勝てるような采配がなければならない。そして、短期決戦では、その期間中に選手を見極める能力も問われるだろう。平山では役不足だと判断することも監督の仕事だ。それは一次リーグで証明されていたのだが……。とにかく、大熊監督の采配(選手交代、システムも含めて)に疑問が残る大会だった。