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July 1, 2005

コンフェデレーションカップ決勝 ブラジル対アルゼンチン 4-1
梅本洋一

[ sports ]

 誰もが予想した顔合わせになった決勝戦。勝負は前半20分までであっけなく決まってしまった。怪物アドリアーノ、名前(ウンチ)と顔が不似合いなミランのカカがいずれもミドルをぶち込んだ。ここまででまだゲーム開始から16分しか経っていない。そして、当然、前掛かりになったアルゼンチンを何とか押さえ込み、後半開始直後にロナウジーニョがヴォレーをたたみこみ、文字どおり勝負あった。
 リケルメを中心にしたアルゼンチンの中盤は確かに展開力に溢れている。イマジネーションに富んだパス、ここぞのクロス……。そしてアルゼンチンは、エメルソン、ゼロベルトを振り切ってブラジルのヴァイタルエリアにいとも簡単に迫る。問題はここからだ。エインセ、コロッチーニの2バックで攻め立てるアルゼンチン、ブラジルの中盤をかいくぐって左右にパスを散らし、ブラジルのゴールに迫るのは確かだ。だが、パスが繋がりつつ、リケルメもソリンも、皆、針の穴をとおすようなラストパスを試みる。アドリアーノを除いて、ほとんど全員が危機意識を持ってブラジルはすでにゴール前を固めている。だからそんなパスが通るのは僥倖を待つくらいの確率だ。たとえパスが通ったとしてもフリーでシュートが打てることはない。前にはジーダがいる。
 アルゼンチンとブラジルの差異はそこにある。中盤の構成力ではアルゼンチンが上だ。おそらくロナウジーニョのイマジネーションだけで中盤が構成されているブラジルに比べて数段上からもしれない。だが、ポゼッションでも、イマジネーションでもフットボールは勝利できない。ボールがゴールネットを揺らすことが他の何よりも優先する。ペケルマンはポジションを動かし、システムを変え、持てるインテリジェンスのすべてを振り絞ってブラジル・ゴールに迫ろうとする。だが、ゴールに迫ってもフットボールには勝てない。
 アドリアーノとカカのシュートを思い出せば十分だろう。ふたりともヴァイタルエリアに入ろうとするその瞬間に右足が振り抜かれている。リケルメもソリンも、その瞬間には彼らの知恵を振り絞ってラストパスに想いを巡らせている。フットボールとはシュートだ。ゴールが見えたら、則シュート。単純なことだ。そんなことがこの決勝から思い出された。

 最後に今回のコンフェデレーションカップの感想。前のフランス大会よりは面白かった。それはメキシコとドイツの奮起によるものだ。スモールフィールドを作りショートパス中心のメキシコのフットボールは、アドリアーノやロナウジーニョやリケルメがいないチームがどのようにフットボール大国に呉してゲームを組み立てるのかの参考になり、ドイツを見ると、モティヴェーションがゲームを決めるいかに大きな要素になっているかが分かる。チャンピオンズリーグが終わってから、それとは別のフットボールが楽しめるのも悪いものではない。そしてしばらくの中断──もちろん日本代表にとっては、対イラン戦、そして東アジア選手権が待ち受けているが、これらはもうメンバーの底上げのつもりでやろう──の後、各国リーグが再開する。欧州ではW杯予選も再開だ。「エキップ」誌でドメネクのインタヴューを読むとフランスは期待薄だ。この人が代わらなければトリコロールがドイツに行くことはないだろう。ル・グエンだろうとデシャンだろうと、ドメネクよりは天文学的に良いはずだ。そして、コンフェデに出場していないイングランド、オランダ、チェコ、スペイン、ポルトガルの動向が気になる。日本代表は、すでに言われているようにアジアモードから世界モード(この言葉がぼくは好きではない)への変換を急ぐだろう。日本代表のベストメンバー(伸二、高原を含む)の真剣勝負はもう2006年のドイツなのだろうか。ぼくらの関心は、すでに秋に、そして2006にある。