サッカー東アジア選手権 韓国対日本 0-1梅本洋一
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中澤の左足アウトサイドに当たったボールが、韓国キーパーの股間からゴールネットに突き刺さったとき、このゲームは決まった。フットボールの勝負とはポゼッションでもシュート数の差でもなく、単にゴールの数だ。もちろんポゼッションが高く、シュートの数が多ければ、勝つ確率は上がるが、実際に勝つわけではない。
ベタ押しの韓国がゲームに勝てなかったのは、シュートが入らなかったことと、この日のキーパー土肥が当たっていたからだが、ゴール前で冷静にシュートを決められないのは、単に弱いということだ。多くの新聞等の論調は、ジーコの強運が戻ってきたと書いている。坪井の足がつり、中澤が仕方なく入り、そこにコーナーのボールが来たという「怪我の功名」だというのだ。だが、これはまちがっている。昨年のアジアカップ以来、このチームは、最後のホイッスルが鳴るまで、勝ちでも負けでもない事実を何度も身をもって体現している。北朝鮮にはコンディションが悪く負けたが、中国戦では2点のビハインドをはね返している。このゲームでは終了直前に1点を入れている。それも経験のないサブ中心のメンバーでのことだ。評価すべきだ。
だが、同時に、次の2点の教訓も押さえておきたい。まず、中田、俊輔、伸二を欠くとチーム力が半減すること。コンフェデの対ブラジル戦の幻の1点を思い出すとよい。中田、俊輔、加地の間でワンタッチのパス交換の末、加地がゴールをしたシーンだ。オフサイドでノーゴールだったが、ああした見事なアタックは東アジア選手権全体を通じて見ることができなかった。1対1に勝てる中盤がなければ、このチームの価値はずいぶん下がる。そして、2点目。阿部、今野という2ボランチは確かに頑張ったし、阿部のFK、今野の潰しはよかったが、彼らはディフェンスからアタックへと切り替える展開力がない。相手のアタックは彼らのディフェンスで遅延するが、彼らのディフェンスからアタックに転じるとき、どうしてもタイミングが遅くなる。全体を見渡せるパサーがいない。このゲームの勝利も、もちろんゴールを決めた中澤が大きな活躍をしたからでもあるが、それ以上に、本山から小笠原への交代こそ、重要なモーメントになっている。残念ながら、小笠原はまだ超一流クラスには通用しない──プレーが淡泊すぎる──が、アジアクラスではやはり重要なコマになる。消えていた本山を小笠原に代えることで、チームに活気が生まれた。玉田も大黒もひとりで局面を変えることはできない。日本代表のメリットは何と言っても多彩な中盤にある。それが、退屈な東アジア選手権で再確認された。