トライネイションズ ワラビーズ対オールブラックス 13-30梅本洋一
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ワラビーズはスティーヴン・ラーカムの怪我でマット・ギタウをSOに入れた布陣。前半こそ、ほぼ互角の展開だったが、ギタウが怪我をしてフタットリーが入ってから、オールブラックスの一方的な展開になった。SOの不在というのは不運であるけれども、グレーガン=ラーカムというハーフ団がワラビーズの中心だったことが逆説的に理解される。ジョージ・スミスでもフィル・ウォーの第3列の両翼ばかりではなく、ボールのリサイクルを中心とするワラビーズの戦法に、このハーフ団は欠かせないのだ。
そしてオールブラックスはこの日久しぶりにロコゾコの先発。彼が2トライを上げ、左ウィングとしての彼の能力の高さが証明された。ダニエル・カーターのラインコントロールは見事のひと言。去年、ぼくも酷評したフラットラインが活き、アーロン・メージャー、ウマガの両センターを中心にラインブレイクを重ねる。マッコー、コリンズの両フランカーも、スミス、ウォーを遙かにしのぐ活躍。後半のワラビーズを見ていると、昨年、オールブラックスがフランス遠征したときのサンタンドレの解説の言葉「On y peut rien(どうしようもない)」が思い出される。力の差がまざまざと見せつけられた。ラック、リサイクルの反復によるワラビーズのアタックに、第3列を中心に徹底して絡み、何度もターンオーヴァーして見せたオールブラックスの力は感動ものだ。共にスプリングボクスに16-22で敗れたとはいえ、アウェイでワラビーズを一蹴したオールブラックスの実力はワラビーズよりも2枚も3枚も上であることが証明されたゲーム。トライ数1-3の完勝。
だが、もちろん心配もある。世界最高のSOに成長したダニエル・カーターが、後半に怪我で退場したことだ。ラインコントロールと正確無比なキック──もうこれはウィルキンソンではなくカーターだ──が売り物と思われているこの「イケメン」SOだが、このゲームを見る限り、ディフェンスも素晴らしい。ワラビーズのFWめがけてファーストタックルに何度も行き、見事に倒している。これはすごい。もちろんカーターの代わりに入ったマカリスターの才能も認めるが、派手なプレーも地味なプレーも黙々とこなすカーターは本当に素晴らしかった。幸い2週間のブレイクはあるが、怪我から復帰してくれることを祈る。