ドイツW杯 欧州予選 フランス対フェロー諸島 3-0梅本洋一
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ジダンの復帰はフランスの日刊紙の一面を飾った。絶体絶命のフランスが復帰させたのはジダンばかりではない。テュラム、マケレレも戻ってきた。GKのクーペからディフェンダーが右からサニョル、テュラム、ブームソン、ギャラス、ボランチにマケレレとヴィーラ、そしてマルーダとジダン。2トップにシセとアンリ。これが先発メンバー。若返りもへったくれもない。ドメネクは、恥も外聞もなく予選突破にすべてを賭けてきた。
そして結果は3-0。シセの2ゴールと1オウンゴール。珍しく大勝したし、ジダンもテュラムもマケレレもよかった。確かに勝つには勝ったし──フェロー諸島の実力を考えれば当然の結果だ!──、シセはよく頑張ったが、内容的にはさっぱり満足できない。98年のW杯優勝当時を80、2000年のユーロ優勝時を100とすれば、50%程度の出来だろう。個々人は勝っている(当たり前だ。日本代表だってフェロー諸島の選手の個人技には勝つ)し、ポゼッションも高いのだが、チームにまったく運動感が見えない。ボールを中心に躍動するチームがない。各自の持ち場では、相手に負けない。だが。チームとしてどうやるのかがさっぱり見えないのだ。右のサニョルを除いてディフェンス・ラインは相当強い。ギャラスもチェルシーでは左サイドをやってはいるが、やはりセンターバックの選手だ。つまり、このディフェンス・ラインで点を取られることはないだろう。カヴァー・ディフェンスに走る必要などない。1対1で十分に勝っているのだから。マケレレ、ヴィーラのヴォランチコンビにせよ。世界有数であることはまちがいない。だが、あまりには持ち場に拘るあまり、ダイアゴナルな走りとスペースの創造がまったくない。その証拠に、ジダンが退き、ドラッソに代わるとボールがまったく動かなくなる。右のミッドフィールダーに起用されたマルーダはやくやっていたし、シセだったら何本もシュートを打てば2本くらいは入る。だが、ギャラスもサニョルもアーリークロス中心で、ミッドフィールダーを追い越してマイナス・クロスがゴール前に上がる回数は極端に少ない。
フェロー諸島には勝てるだろうし、イスラエルにも勝てるだろうから、W杯出場は固くなったろうが、このフットボールではさっぱり面白くない。アンリは得意の左サイドの上がりを止められ、フリーで動けるのはジダンひとり。クリエイティヴィティもへったくれもない。ドメネクではだめだ。幸いまだ時間はある。