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September 28, 2005

チャンピオンズリーグ アヤックス対アーセナル 1-2
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 この火曜日でもっとも興味深いゲームだと思われたが、予想が外れた。まず両チームのコンディションが悪いこと。怪我人が多い上に、リーグ戦でも不調だ。どちらも最良のものを出し切るどころか、何となくゲームが始まり何となく終わってしまった。
 アーセナルはアンリ、ベルカンプ、ジウベルトが怪我、レーマン、ファン・ペルシが出場停止。アヤックスはスナイデルとトラヴェルシが故障。いったい誰が出るのか? 誰が出ても1.5軍だろう。悪い予感は見事に当たり、見所のないゲームだった。勝ったアーセナルにしてもポゼッションは40%。プレイメイカーのセスクにボールが集まらず──ボールを集めるにはポゼッションが低すぎる──、ピレスはPKを決めたシーンを除いてほぼ仕事をせず、フレブはボールを持つと前を向いた瞬間にボールを奪われていた。コール、ラウレンのサイドアタックもほとんどなし。開始2分にフラミニ、レジェス、リュングベリで1点とり、後半にレジェスが得たPKをピレスが決めただけ。他に記述することは何もない。
 だが、アヤックスはアーセナルどころの話ではない。ポゼッションで大きく優位に立ちながら、パススピードが遅く、展開されず、パスが3本繋がると、すでにアーセナルのゴール前は人混み。キャンベル、トゥレに制空権を奪われ、ときおり放つミドルだけがチャンス。かつてトータルフットボールがここから生まれたというのは、碑石に刻まれた事実であっても、今ではもうその面影もない。ニースケンス、クライフのいた時代ならもちろん面影ですむだろうが、ぼくらはリトマネン、クライフェルト、セードルフ、カヌーの時代だって知っているし見ている。いくらボスマン判決以後、4大リーグの人材派遣基地になったとはいえ、今でも才能ある若手の巣窟であることはまちがいない。解説の粕谷秀樹は「ボールも人も走らない」と嘆いていたが、彼ならずとも溜息のひとつも出てしまう。「絶対に勝とう」としていないばかりか「どうやって勝つのか」という戦術も見あたらない。中心選手の故障ばかりに原因を押しつけることはできないはずだ。ましてやホームだ。満員の観客の前だ。そして、こんなにだらしないゲームをしている。勝とうとしている選手が誰ひとり見あたらない。監督のフリントには猛省を促したい。いや、それ以上に、ぼくがアヤックスの首脳なら、楽天の三木谷のように振る舞うかもしれない。ぼくはなぜクーマンが辞めたのか知らないが、とりあえずクーマンは勝とうとしていた。選手を鼓舞して彼らのベストを出させていた。