フランス対スプリングボクス 26-20梅本洋一
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この秋のテストマッチシリーズの中にもっとも注目されるべき一戦。ワラビーズを撃破し、カナダ、トンガを一蹴したフランス。アルゼンチンにアウェイで競り勝ち、やはりアウェイでウェールズに勝ったスプリングボクス。共にこの秋の最終戦になるゲーム。
平均体重で10キロ下回るフランスは、当然、ディフェンシヴなゲームを強いられる。セットプレイは、スクラム、ラインアウトともにほぼ完敗。だがスプリングボクスは、ゆったりと攻めることができない。原因はふたつ。開始早々フランスが左サイドをニアンガが疾走し、トライを奪ったこと。ニアンガに代表されるフランスのバックロー、そしてロック陣がポイント、ポイントで強烈なタックルを見舞い、スプリングボクスのアタックの芽をつみ取ったこと。常にリードしてゲームを運び、ディフェンスにあっては、3人がまとまってタックルし、ゲインラインを許さない。スプリングボクスの誇る両ウィングが快走する機会はほとんどなかった。
もちろん普段はカウンターから一発でトライを奪うスプリングボクスの戦術がフランスの激しいディフェンスで寸断され、セットプレイの優勢を生かせなかったことがスプリングボクスの敗因だ。逆にフランスは変わった。マイボールを次々に遠くへと運ぶ超ワイドなパス攻撃から、やや深めのラインからフルバック(カステニェード)を入れて、パスとキックを織り交ぜ、ハーフ団は、ディフェンスラインに近づくと計ったようなキックかFWの突進で立て直し、スプリングボクスの両ウィングを背走させた。スカウティングの勝利だろう。確かに1対1ではスプリングボクスの方が上だ。フレンチフレアというのはパスばかりではない。有効なキックを織り交ぜつつ、スプリングボクスの一番強いところ(FWと両ウィング)を前に出さない方法。これもまたフレアだろう。前半でラインアウトのキャッチァーであるティオンを欠き、しかもほぼ制空権をとられてもフランスは負けなかった。欲を言えば、ときおり大きく長いパスを交えれば、もっと点差が広がったかもしれない。今からシックスネイションズが楽しみになってきた。