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January 9, 2006

ラグビー大学選手権決勝 早稲田対関東学院 41-5
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 ほぼ予想が当たったことで満足しているわけではない(関東のトライを2と予想したが1トライのみに終わった)が、発見が少ないゲームだった。FW戦、接点、ライン攻撃、その局面でも早稲田が関東を圧倒した。早稲田が5トライに留まったのは、関東のディフェンスが頑張ったからであり、もしも「切れた」状態に陥ったとしたら、早稲田は10トライは奪ったろう。その程度の差があったということだ。
 それにしても早稲田は堅い。FW戦ではセオリー通りに接点で鋭く、クイックボールが出せないときはリメイクし、相手ボールの時は全員がターンオーヴァーを目指して素早く接点に突っ込んでいく。特に畠山、内橋、豊田の3人の出来は素晴らしく良かった。キャプテンの佐々木が二度冒したパスミスがなければ関東を完封したはずだ。矢富はやや自信過剰だったように見えるが、相手が関東学院程度では穴を開けずにすんだ。取るべくしてトライを取り、粘り強いディフェンスと、接点での頑張り。5トライはその結果だ。決勝戦でのアルティメイト・クラッシュは清宮の感動を引き出した。
 基本通りのラグビー、予想通りの圧勝。だが、足りないものはある。フレアだ。唯一のフレアの源泉は曽我部だろう。ラックサイドにただひとり残り、内橋からのパスを受け、4人のディフェンダーを交わして得た彼のトライはこのSOの可能性の一端を開示したにすぎない。もっとできるはずだ。FW戦が完勝なのだから、もっとフレアの幅を広げれば、格上のラグビーを見せつけることができたろう。池上、今村がループを使えば、あと2〜3回はラインブレイクが可能だったはずだ。負けた側の関東からすれば、途方もない36点差だったかもしれないが、勝った側から見れば、まだまだ伸びシロはある。むしろやっとスタートラインに着けた程度のことだ。
 その点で学生たちの歓喜と清宮の涙は、日本選手権優勝まで取っておいてほしかった。この程度で感動し、この程度で満足してはいけない。この「佐々木組」は、もっと上まで行ける。目標は、対関東学院ではない。対トヨタ、対神戸製鋼、そしてそれが望めるならば、対東芝府中、対NECであるはずだ。あと1ヶ月間で目標をはっきりと見定め、そのための対策を講じることが清宮と「佐々木組」に課された最大の課題だ。もうレヴェルの低い歓喜で胸を詰まらせている暇はない。