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February 16, 2006

トリノ・オリンピック観戦記──2
梅本洋一

[ architecture , sports ]

スピードスケート500メートル
 日本選手にメダルが期待された男女500メートル。及川、岡崎が共に4位。もっとも期待された加藤と吉井は入賞はしたがメダルに遠く届かない。こんなものなんだ。W杯で連勝しているならともかく、勝ったり負けたりでは、大きく崩れていない選手たちは、実力を出しているだろう。4年に一度のオリンピックというが、W杯は毎年何戦もあって、多くの選手たちが顔なじみだ。4年に一度会うわけではない。毎週のように会っている。伏兵など存在しない。10人近くの実力の拮抗した選手たちの中から、毎回、優勝者が出る。当たり前のことだ。
 だからオリンピックに勝つ方法はふたつしかない。まず、当たり前のようだが、圧倒的な実力がある場合。W杯で連勝を続け、タイムもほかを大きく引き離して絶対的な強さを持っている場合がそれだ。たとえば男子ならコンスタントに34秒台が試合で出せる場合、おそらく圧倒的な金メダル候補になり、悪くても銀か銅は固い。あるいは、オリンピックにピーキングすること。実力が拮抗している場合、これしか勝つチャンスはない。だが、もちろんピーキングは皆やることだし、ピーキングしていても、男子の加藤のように不可避の事故でスタート時間が遅れる等の解決不能な問題も残る。つまり、圧倒的な実力差がなければ、4位は誉められるべきだ。だが、清水の低落ぶりは見ていてかわいそうになる。自分自身で調整するのもよいが、彼には優秀なコーチが必要だ。

スノーボード ハーフパイプ
 成田憧夢と今井メロ兄妹が話題になったが、ふたりとも予選落ち。試合前のふたりの強気が哀れに見える。ビッグマウスは個人的には好きだけれども、それには絶対的な力の裏付けが必要だ(モハメッド・アリのように)。可能性の低い技に挑戦するのは練習においてであってゲームでそれに挑むのは戦術として誤りだ。ふたりには、ビッグマウスであることを除けば、他の選手よりも優れた部分はなかった。予選落ちして泣くなら、できもしない技に挑戦して病院送りになるくらいなら、もっと練習して、涼しい顔で難しい技を次々に繰り出し、それを簡単にクリアすることだ。ビッグマウスになるのは、それからでいい。たとえばフットボールなら、一流選手が練習中ならどんな体勢からでも簡単にシュートを決めるだろうが、ゲームではこれが入らない。100%の確信を持つために練習がある。格好良くビッグマウスで対応するのはゲームの後でいい。
 別のことだが、スノボチームには──モーグルチームにも──ユニフォームはないのだろうか。アメリカが白地に黒のストライプで全員が決めていたのに、日本選手たちは思い思いのスタイル。もちろん個人競技なのだが、それでもチームで戦うのは必要なことだ。それに個人競技にもチームを持ち込めるのはオリンピックくらいだろう。フットボールでもW杯の必要性が問われているが、それでもブラジルの子供なら全員セレッソンの黄色いユニフォームに憧れるだろう。オランダの子供なら、将来は皆、オレンジ色を身に纏いたいだろう。イタリアみたいな超個人主義の国でも、代表は何でもアズーリだ。ユニフォームを着ると、今日は大事な試合なのだ、と思うこともあるんじゃないか。それはプチナショとは違う。町内会の知人を仲間にすることだ。