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February 19, 2006

ラグビー日本選手権準決勝 早稲田対東芝府中 0-41
梅本洋一

[ sports , sports ]

 東芝7トライの完勝。早稲田の今シーズンは終わった。早稲田の選手たちは自分たちの無力感を深く味わったに違いない。ホルテン、マクラウドの接点での技と強さが早稲田の第3列とセンター陣に大きく勝り、早稲田はボールをまったくキープできなった。早稲田が東芝より優れているのはハーフ団と書いたが、そのハーフ団にしてもボールが来なければ、彼らの弱点であるディフェンス力のなさを徹底してつかれることになる。今シーズンの早稲田はFWで優勢に立つことを前提に作られているので、そのFWが圧倒的に劣勢では為す術なく敗れてしまうのも仕方がないことだ。選手はよくやったと思うし、清宮もトヨタに勝利すれば所期の目的は完遂したことになるだろう。
 だが、ここでは、あえて──本当に「あえて」──苦言を呈しておこう。今シーズンの早稲田の圧勝に次ぐ圧勝でも、ぼくは常に不満を感じていた。余りにも横綱相撲をとりすぎていたからだ。FW戦に圧勝して、ボールをキープし続け、余裕を持ったBKでトライをとり、BKに回さなくてもFWのモールで(そしてスクラムで)トライを取る方法は、もちろんドメスティックレヴェルでは十分通用したろうし、事実、大学レヴェルでは向かうところ敵なしだった。清宮が良い選手をスカウトし、基本的な技能を高めて勝利を重ねる方法はまちがっていない。しかし、より強力で、よりフィジカルが強く、より適応能力の高いチームと当たったとき、今日の東芝戦のような結果になることは目に見えている。番狂わせはない。トヨタのように力が接近したチームなら勝てるだろうが、東芝を食うことはできないのだ。
 だが、かつての早稲田ならFWが3-7で劣勢でも勝利をたぐり寄せるノウハウを持っていたと思う。だからぼくらはそういうゲームに感動した。スクラムを押されても、接点で負けても、数少ないマイボールをトライに結びつける戦術を持っていたのだ。今のように明治や関東学院のFWを粉砕して勝つなどと言うのは30年前なら夢のまた夢。劣勢FWが必死に確保したボールを多彩なプレイでBKがトライに結びつける。それが早稲田だった。「佐々木組」には残念ながらその戦術はない。東芝には玉砕あるのみ。
 ぼくが清宮なら、今日のゲームでは、曽我部にキックの指示を出したと思う。真っ向勝負なら負ける。だから当たらない。接点を減らす。東芝を背走させる。だからキック。99年のW杯準決勝でフランスが対オールブラックス戦でとった戦法だ。それでも勝てないかもしれないが、勝てるとしたら、キックのこぼれ球からのカウンターしかなかろう。もちろん、清宮ならずとも、選手たちが東芝のプレッシャーを生で感じていたはずだから、キック中心のゲームプランへと切り替えることもできたはずだが、それをするには今シーズンの早稲田は強すぎたのだ。今日は10回やったら9回負けるだろうが、1度なら勝てるかも知れないゲームプランを選択すべき日だった。真っ向勝負で勝てるはずがないのだから、戦術で勝つ。それしかないゲームだったが、清宮と佐々木はそれを選べなかった。清々しいと言えば清々しいが、ぼくは今シーズンの早稲田でもう1ゲーム見たかった。