トリノ・オリンピック観戦記──4梅本洋一
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男子大回転
やはりソルトレイクに比べてセストリエールのスキー場は綺麗だ。アルプスも、フランスサイドとは異なり急峻ではなく穏やかな表情をしている。森林限界を超えていて、しかも、ゆったりした山塊。つまり、スキー場にうってつけの場所だと言うことだ。この大回転コースも実に快適で、上部の急斜面、中間の緩斜面、そして急斜面、緩斜面と続いてゴール。適度にうねりがあり、本当に強いものが勝ちそうなコース。その証拠に全体の半数の選手がコースアウト。2本目に進めなかった。明もそのひとりだったが、中間のうねりまではトップ10に入っていたのではないか。もちろん、GSは彼の種目ではない。
優勝はベンヤミン・ライヒ。前半の急斜面ではボディ・ミラーに後れをとったが、中間のうねりのある中斜面の滑りはやはりスラローマーのもの。減速を避け、本当にほれぼれするような滑りだった。トップ10で1秒差にひしめくハイレヴェルの戦いのなかで、それぞれの選手が特長を出しきった面白いレースだった。感動ものはヘルマン・マイヤー。かつての力でねじ伏せるような滑りはもうないけれども、実にスムーズで全体をひと筆書きするようなすべりは快適そのもの。そして速い。
そして日本人で2本目に残った吉岡は、オリンピックでなければ2本目に残れない滑り(オリンピックは1本目で完走すれば2本目に残れる)。明だけではなく、スラロームチームがもうすこしGS参加に前向きであれば、スラロームの技術向上に役立つと思うのだが……。
ジャンプ団体
日本は6位らしく6位。それ以上でも以下でもない。ゲームとしては、フィンランド、オーストリア、ノルウェイの3チームがダントツで、他の選手はオリンピック──つまり参加することに意義があるだけ──という感じ。ポーランドのマリシュもチェコのヤンダも例外ではない。葛西も岡部も2本目は彼らなりに健闘したが、彼らが「良い」ジャンプをしたところで、メダルは関係ない。もう遙か彼方の話だ。その意味で伊東大貴が1本目に121メートル程度でガッツポーズをしていたのは納得できない。仮にもW杯で表彰台に立ったことがあるのなら、121メートルでは悔しいはずだ。コフラーもモルゲンシュテルンも伊東と同世代だ。
それにしても、トップ3の選手たちは皆すごい。ノルウェイのヨケルソイが141メートルを飛べば、ハウタマキが138、そしてラストのモルゲンシュテルンは140.5! 同じ4人目で同じゲートで、ほぼ同じ条件の岡部が132メートル。ラージヒルにおける戦いの反復だ。ゲートが低い位置にあった1回目、日本チームの最長は葛西の122.5。同じ条件で最長はアホネンの129.5。やはり勝つには10メートル足りない。
昨日はジュリディスタンスと書いたが、今はヒルサイズと言うらしい。K点勝負なんて長野までの話だった。