シックスネイションズ06 フランス対イングランド 31-6梅本洋一
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フランスの完勝のゲーム。その戦略はあとで書くことにして、このゲームの印象として誰の目にも見えることは、イングランドの退潮だ。ワールドカップ優勝から2年半が経過し、監督は交代しても、このチームはかつての遺産を使い切ってしまっているのに、遺産を粉飾決算して金庫に預金があるような戦いをしていることだ。徹底したFW戦。少しずつ前進し、しぶとく敵陣に入り、そこでPG。ジョニー・ウィルキンソンがいたからこそ可能だった──そして働き盛りのFWがいたからこそ可能だった──戦術に何の変化がないまま、ウィルキンソンは怪我で長い不在が続き、FWの面子は名前こそ有名だが、単に「昔の名前」が通用しないことを理解しようとしていない。だからホジソンではウィルキンソンの代わりにならない。FWのファイトだけで、ボールはトライラインを越えない。つまり、どうやってトライをとるのかという方法論がこのチームにまったくない。したがって、このゲームはノートライ、2PGのみという屈辱的な敗北に終わる。
そしてフランスの勝利の方程式。バックス陣に最良のメンバーが揃わないフランスは、フレアを封印する。いや、封印という表現はまちがっている。ファンタスティックなラグビーをしようにも、それを具現する面子がいないとき、人はリアリストにならざるを得ない。勝つためにどうするか。いくら老いたとはいえ、イングランドの最良な部分はFWだ。正面切っての対決を避けたい。だからキックだ。しかし、逃げのタッチキックではポゼッションはイングランドになる。だからハイパント! FWの背後にハイパントを上げ、走力のあるバックスとフランカー陣に追いかける。マイボールになる確率は、ヤシュヴィリ、ミシャラクという好キッカーのフランスなら五分五分。マイボールになれば素早く展開し、たとえマイボールにならなくても、相手FWをトライラインの遙か彼方に追いやることができる。後はタックル。早稲田が東芝にやるべきだったことをフランスがイングランドにやった。そして完勝。
もちろん見ていてわくわくするラグビーではない。リアリズムは細部にしか宿らず、大きくボールが展開するラグビーになる瞬間は少ない。しかし勝つためにはこれでいいし、勝つことで選手は自信を持つ。自信を持つと人は大きく伸びる。