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May 10, 2006

アーセナル対ウィガン 4-2
梅本洋一

[ architecture , sports ]

僥倖とはこのようなことなのか。
スパーズは勝ち点1差で4位。アーセナルは5位。したがって、アーセナルの来期チャンピオンズリーグ出場は、17日に決勝でバルサに勝つか、この日に勝利を収め、スパーズが敗退するか引き分けるかしかあり得ない。しかもプレミア最終日であると同時に93年の歴史を持つハイバリー最終戦。
展開は必ずしもよくない。ウィガンのいつものパワーフットボール。手数を少なくし、ロングボールを前戦に放り込み、全員が走る。作戦もへったくれもない。力だ。気力だ、というフットボール。アーセナルは、こういうフットボールにめっぽう弱い。FKのクロスからウィガンが先制。直後にゴール前の混乱からピレスの右足が伸びて同点。だがトンプソンのFKが直接ゴールインしふたたびウィガンのリード。ノーガードの打ち合い状態。中盤が省略され、崩しのプレーも皆無。アーセナルもウィガンの一発ノックアウトを狙う強力パンチに合わせて、前へ! セスクも冷静さを失い、ひたすらボールを前方にフィード。下がり気味のウィガンのディフェンスラインの餌食だ。
どうすればよいのか? 簡単なことだ。後ろにも味方がいることを知り、フリーの選手がボールを散らすこと。サイドから攻めること。これだけ。でもいくつものプレッシャーとこのいくつかの記念すべき日に舞い上がったのか──そしてセスクは若い!──、アーセナルもパワーフットボール! アンリがヘッドで決めるのは年に2〜3回。フレブもピレスもドゥリブルとパスの選手であって、オレがねじ込んでやる!というタイプじゃない。
だが、トンプソンのミスパスを拾ったアンリがゴール右隅にクリーンシュート! これで落ち着く。自分を取り戻す。みるみるパスが回り出し、セスク、フレブ、ピレスがアンリに合わせ始める。アイスホッケーで相手がマイナーペナルティのあるときのアタックのように、ヴァイタルエリアを取り囲み、穴を狙い続けるガンナーズ。エブエも、復帰したアシュリー・コールも両サイドを疾走する。こぼれ球をジウベルトが拾いまくる。たまに来る背後へのボールをキャンベルがはじき返す。もう大丈夫だ。アンリ2点目、そしてPK。アンリ、冷静に左に決め、ハットトリック。ハイバリーの芝にキス! ベルカンプ登場! ハイバリーは祭りの晴れがましさに包まれる。スパーズと対戦中のウェストハムリードの報。
テレビの映像はすぐ隣に完成しつつあるエミレイト・スタジアムを映し出す。完成しつつあるのは8万人収容の新スタジアムばかりではない。チャンピオンズリーグ決勝に向けて、ようやくアーセナルというチームが完成しつつある。4-1-4-1というフォーメーションで、アンリ、ジウベルトを1の位置に置く新たなチームが躍動を始めた。17日に期待するのは勝利でもあるけれども好ゲームだ。