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August 10, 2006

キリンチャレンジカップ 日本対トリニダード・トバゴ 2-0
梅本洋一

[ cinema , sports ]

トリニダード・トバゴのメンバーがベストではないことを差し引いても、新生日本代表の動きは溌剌としている。W杯で決勝トーナメントに残らなければならないとか、自らの進退とか、そういった抑圧から一切自由になり、純粋にフットボールがうまくなりたいという若者たちの欲求が伝わってくるからだ。負けてもいいんだ、良いフットボールをやろうよ。良いフットボールは、ピッチの中をボールと人が縦横無尽に動き回るフットボールだ。イビチャ・オシムの方針は極めて単純だ。ボールを奪ったら、二人目、三人目がスペースに飛び出し、ボールを呼び込んでシュートに持ち込もう。ただそれだけ。そしてディフェンスにあっては、ハードに、そしてサポートをしっかり。ただそれだけ。
 自由と言われていたけど、下手くそな守備をいつも批判されて、攻め上がったときも裏をとられないようにいつも考えているうちに自分のスピードや技術を忘れてしまったアレックスが、ひとつポジションを上げてもらったあかげで、キレキレ。後ろには駒野もトゥーリオもいるから、前にいって大丈夫だ。久しぶりにやりがいのあるトップ下をやらせてもらって、気分が良いし、何よりみんな動き出しが早いからパスが出しやすい。前にもふたり、両サイドにも人がいる。山瀬も溌剌としている。むらっけはあるが、トゥーリオも抜かせないぞという気迫で勝負。やや問題があったのは、ポジショニングが最後までつかめなかった長谷部と気合いが空回りした我那覇。あとは及第点をやれるだろう。
 だが、オシムの指導するフットボールの全容がこのゲームで見えるはずはない。彼は基礎の基礎を唱えているだけ。フットボールでベンチを見る暇なんてないから、自分で考えるのは当たり前だ。ディフェンスのシステムがしっかりしてきているので、2人目3人目が動き出しを早めなければ、得点できないのも当たり前だ。このタヌキ親父は、まだ自分の姿を見せてはいない。まずは勝った。でもすべてはこれからだ。とりあえず言えるのは、選手たちも、反町、大熊、オシムのベンチも楽しそうだったこと。これはいいことだ。