『トウキョウ今昔 1966-2006』田中長徳梅本洋一
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1966年と2006年の「トウキョウ」を右ページと左ページを合わせ鏡のように見せてくれる写真集。2枚の写真の下には、写真家・田中長徳と片岡義男、坂崎幸之助、なぎら健壱との対談が収められている。2枚の写真をくらべてじっくり眺め、下の対談を読み進めると、いろいろなことが分かる。もちろん写真は、かつてあったものしか写さず、今、対象がどうなっているのかに無関心だ。かつてと今が同じかも知れないし、異なっているかもしれない。写真にとってそんなことはどうでもよく、レンズの前にある光景を写し取るだけだ。デジカメでない限り、現像の時間が必要になるから、撮った写真に写った光景が、写真を見るときにどうなっているか、分からない。ロラン・バルトの言うとおりだ。
最近、こうした写真集がたくさん出ている。そんな中で本書は出色だ。まず一枚一枚の写真の力。さすがにかつて天才写真家と呼ばれた人の作品だ。そして、写真の下にある対談の人選──片岡義男、坂崎幸之助、なぎら健壱(偽ライカ同盟の面々)──もよい。みんな、自分の言葉を持っている。坂崎もなぎらも東京の人だ。写真に写っている40年前のこともつい昨日のこともよく知っている人たちだ。その差異について、的確に語ってくれている。通常、この種の写真集、たとえば『東京、消えた○○』みたいなタイトルが付いている写真集を見ていると、とても強いノスタルジーを感じるのだが、不思議なことに、この写真集からは、そんなノスタルジーを感じない。なぜだろうか? 見開き右側の40年前の写真と今の写真が同質だからだ。同じモノクロで同じ風景を撮り、もちろん、その2枚の間に、時間の流れや対象として写し取っているものの変化はしっかりあるが、写真としての硬質性には隔たりがない。この写真家の個性がそこにあるのだろう。
1966年に解体中だった帝国ホテルと今の帝国ホテルの写真が並んでいる。田中長徳が「この当時の1966年。確かにいいんだけど、この客室数じゃ商売にならない」と言う。その言葉を受けた片岡義男はこう応える。「商売なんか、あきらめれば、そこから新たな道が見えてきたはずですよ」。
今月号の「東京人」は上海の特集だ。山口淑子(李香蘭)のインタヴューから始まる今月号はなかなか面白い。読み進むと最後に別の小特集に出会う。東大の鈴木博之教授が、三井不動産、三菱地所、森ビルの社長や副社長に連続インタヴューをしている。表面的には六本木防衛庁跡地の東京ミッドタウンの小特集の形態なのだが、鈴木教授の目的は、三井不動産(日本橋)、三菱地所(丸の内)、森ビル(ヒルズ)がなぜ都心の再開発を信じがたい速度で進めているのか、という疑問を著説ディヴェロッパーたちにぶつけることだ。社長や副社長は、東京の大都市としての競争力やITに言及するのだが、彼らにとって、再開発はビジネス以外のなにものでもない。「商売」の論理が他のすべてに優先している。「トウキョウ」には「新たな道」がなかなか見えてこない。