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November 2, 2006

バルセロナ対チェルシー 2-2、アーセナル対チェスカ 0-0
梅本洋一

[ sports , sports ]

 グループステージ屈指の好カードも、ひとつの判定への疑問から実に荒れたゲームになってしまった。前半、メッシを倒したアシュリー・コールにイエロー。誰もがそう思った。だが、実際にはアシュリー・コールではなく、ランパードに出ていたらしい。後半になってアシュリー・コールにイエローが出されたので退場かと思いきや、そのままプレー続行。選手も観客も疑心暗鬼になる。選手たちの疑いがプレーにも現れる。単にファールなのか、イエローなのか、その境界線がさっぱり見えない。ファリーナ主審は先週ミラノダービーを吹いていて、信頼に値する審判なのだろうが、このゲームに限っては、選手と一緒にいらいらしてしまった。ジャッジは大事なのだ。
 だからゲームはひたすら荒れてしまう。イエローが出まくる。好ゲームのはずがさっぱり好ゲームにならない。これでは大事なゲームが台無しだ。結果は2-2のドローだが、期待したぼうらはがっかりなゲームだ。

 そして翌日。厳寒のモスクワでチェスカに1-0で敗れたアーセナルのリヴェンジが期待された。だが、ヴェンゲルは、「このゲームもタフなものになるだろう」と予想していた(結果はその通りになった)。
 なぜか。チェスカの老獪さだ。弱冠20歳の天才GKアキンフェエフの前に屈強だが、決してバタバタすることのない3バック。その前でスクリーンプレーに徹する2ボランチ。2ボランチを助ける両サイドハーフ。トップ下のドゥドゥがアーセナル・ボールになったときまずディフェンスに入るので、アーセナルは、その8人の間を縫うようにアタックしなければならない。確かにポゼッションでは大きく上回っていたし、前半だけでもセスクとアンリ、ファン・ペルシがしっかり決めていれば3-0のゲームだった。それはその通りだし、解説の加藤久が言っていたように、決めるべきところで決めないとツケがまわるというゲーム展開だった。しかし、ゴール欠乏症の他にもうひとつとても重要な問題があったように見えた。
 この日のアーセナルは、左からクリッシー、ギャラス、トゥレ、ホイト、その前にジウベルト、中盤にファン・ペルシ、ロシツキ、セスク、フレブ、そしてアンリ。バックラインは問題はなかった。ジウベルトもときどきパスミスをしたがいつものことだった。ロシツキ、フレブもよかった。問題はセスクだ。今のアーセナルはこのセントラル・ミッドフィールダーに多くを負っている。バックラインからのボールは両サイドに散らされるか、セスクに送られる。両サイドは突破されたらゆっくりと守ればいいが、セスクから鋭いパスが出ると守りようがない。だから、押さえるべきはセスク。ガザエフ監督ならずとも誰でもそう考える。セスクが持つ。最低3人で囲む。パスが遅延する。スルーパスのコースは4バックで押さえてあるから、セスクのパスコースはバックパスのみ。セスク、フレブ、ロシツキが有機的に動けるスペースはすべて消してしまう。いらつくセスクは奪われたボールにアタックし、ファールを連発する。普段なら軽く決められるシュートが、セスクの遅延によってタイミングがやや遅れる。入らない。だから2度目は正確を期そうとして枠を外す。
 バックラインでボールを奪い、ミッドフィールドにボールが供給されても、アーセナルのパススピードは上がらない。問題はここにあった。ヴェンゲルもとうとう我慢できずにセスクをフラミニに代えた。ドローも仕方がない。セスクはもっと簡単にボールをさばくべきだ。