マイクロソフトカップ決勝(東芝対サントリー 14-13)他梅本洋一
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怒濤の週末だった。日本選手権1回戦の2ゲーム(九州電力対早稲田、タマリバ対関東学院)、その晩、シックスネイションズの開幕戦2ゲーム(イタリア対フランス、イングランド対スコットランド)、日曜日はマイクロソフトカップ決勝(東芝対サントリー)と深夜にシックスネイションズ(ウェールズ対アイルランド)。計6ゲーム!こんなことをしていると別の仕事がまったく進まない! 皆さん、すみません。
キックオフの時間順にいくつか。九電対早稲田は、今年の早稲田を象徴するようなゲーム。前にも書いたが、プロップを除いて全員がフランカーのようなFWで横綱相撲をとろうとして勝てるわけがない。確かにバックスにはビッグネイムが揃っているが、ラインブレイクの方法にまったく工夫がないし、ディフェンスが悪すぎる。スコアは33-36だが、この後、シックスネイションズやマイクロソフトカップを見ると、33点取れば勝つべきだ。九電にしても、競ったゲームの経験がないのを差し引いても、33点献上するディフェンスはザルだとしか言いようがない。結局、1PGが差になったが、こうしたゲームはゲーム・メイクの戦略があれば、どちらかが決定的に勝利するはずだ。基本的なプレーだけで勝負するのであれば、練習マッチで十分。このゲームをどのように進めるのかという基本的なプランもなければ、どこで上回ってどのような勝利するのかというゲームの入り口の部分が欠けている。大学ラグビーの監督は、選手ひとりひとりのスキルアップも任務もひとつだが、明瞭なゲーム・プランを実行できるセレクションを行ってピッチに選手を送り出すことがなければ、務まらない(大学教師としての長年の経験から、どうやって戦うかまで明瞭な言葉で説得しなければ学生は伸びない。自主性を与えて伸びてくるまで待つには4年間でも短すぎる)。かつて近鉄や新日鐵に立ち向かい、東芝に勝利したチームを目の当たりにした者にとって、わずか1年での早稲田の凋落は目を覆う。
イタリア対フランス。ラポルトはこのゲームを試運転にしている。SOにスクレラ息子、SHに長年の懸案だったミニョーニを起用。FBには久しぶりのポワトルノー。そしてフランカーにセバスティアン・シャバル! これらの選手起用が当たり、イタリアに完勝!(39-3)。起用した選手は全員活躍。だが、もちろんオールブラックス戦惨敗の後遺症がこれで治るわけではない。相手はイタリアだ。
イングランドはウィルキンソンの復帰戦を飾りスコットランドに完勝。
そしてマイクロソフトカップ決勝。周知の通り、東芝はインジュリー・タイムでバツベイのトライ(ゴール)でサントリーを1点差で振り切った(14-13)。見るべきは、これも誰でもが語るとおり東芝のディフェンス。バツベイのシンビンから10分間、見事に耐えきった。だが、子細に見れば、このゲームは清宮の強気が招いた敗戦だとも言える。確かに前半こそ、東芝のラインアウト・モールを完全に押さえきったが、風上に立った後半のゲームメイクはいただけない。真っ向勝負では勝てないことがリーグ戦で分かったはずなのに、ここでも真っ向勝負。スクラムトライを公言していた。だが、スクラムはやや優勢かイーヴン。相手への経緯が必要なのではない。相手よりも良いのは、スター揃いのバックス。FWは良いボールをバックスに供給することをもっと心がけ、真っ向勝負をかわす工夫が必要だった。そこで再びSOという弱点が浮かび上がる。東芝の廣瀬がランにキックに長所を見せたのに対して菅藤はディフェンスこそ良くなったが、決定的なパスができない、キックが伸びない。佐々木、平と良い選手が倒れていくのを見ると、体をぶつけ合った部分は東芝が勝っている。それを避けて、走力勝負に持ち込むためにどうすればいいのか。清宮にその方法論がなかったようだ。日本選手権の決勝でもう一度当たるためには、東芝はヤマハ、サントリーとトヨタに勝つ必要がある。東芝の富岡が言ったとおり、この4チームにはあまり力の差はない。
そして、最後にウェールズ対アイルランド(9-19)。秘かにアイルランド・ファンのぼくはこのゲームがもっとも面白かった。いつもながらの誠実なアイルランドFW。そしてこのゲームには明瞭な戦術があった。切り札のオドリスコルを大外に立たせ、大外に人数を割いて、ここから活路を見出す。このレヴェルまで来るとFWに大きな差はない。真っ向勝負を共に仕掛ければPGの差程度。ならばトライを取るにはどうするか。サントリーのようにスクラムトライではなく、綺麗に大外でトライ。そのためには、切り札を外に置く。前半のオドリスコルのトライはそれが見事にはまった。早稲田の今村が大外で首藤や菅野と絡んで抜いていくシーンはあまり見たことがない。来週はフランス対アイルランド! 事実上の決勝だ。