アイルランド対フランス 17-20梅本洋一
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前評判の高い事実上の今年のシックスネイションズ決勝戦。だが、アイルランドはオドリスコル欠場。ランダウンズ・ロードが改修中でクローク・パークというどでかいスタジアム。リオかサンパウロのサッカー場のように立錐の余地もない。
対イタリア戦快勝に気をよくしたラポルトは、故障者以外ほとんど面子を入れ替えず、ハーフ団もミニョーニ=スクレラをそのまま起用。クローク・パークについては小林深緑郎さんの蘊蓄を聞きはしたがゲームを見ていて忘れてしまった。でも、アイルランドはローカルな感じがいいね。皆、素朴にアイルランドを応援している。その素朴さ、純朴さ、誠実さこそこのチームの取り柄だ。キックオフ直後、フランスが押しに押すが、PG2本に押さえる辺りは、アイルランドの真骨頂。徐々にペースを取り戻し、イバネーズがトライすると、オガーラがトライを返し、結局11-13で前半を折り返す。イーヴンだ。フランスはポゼッションするし、ラインブレイクもするが、アイルランドは本当にねばり強い。これが誠実さだ。ひとりひとりが一生懸命やるし、仲間のサポートもする。そういう人々がこのチームにいるということだ。
後半もプレッシャーのかけ合い。共に浅いラインを敷いて、半ズレで抜いていこうとするので、ミスも多い。スペースが最初から奪われているので、オフサイドも多い。つまり、スクラムとラインアウトの多いゲームだったという印象。アイルランドはイタリアと違ってディフェンスで粘るから、フランスはトライを取れない。フランスはウェールズとは違い、大外でポイントが作られても走力のあるFWが追いついてくる。こうなれば反則によるPGか、DGしか点が入らなくなる。一進一退とはまさにこのゲームのことであり、共に頑張るが一進一退の回路からなかなか外に出られない。シャバルが怪我、スクレラが怪我……ボネールとボークシスの投入。ボークシスもスクレラと同じスタード・フランセの一員だが、所属チームではどのように役割分担するのだろう。ボークシスもなかなか度胸があって良い。勝負を決めるキック力を持っている。オガーラのPGで後半アイルランドは4点差をつけるが、インジュリータイムで何と、この日、右ウィングに起用されたヴァンサン・クレールがゴール下にトライ。ボークシスが難なくコンヴァージョンを決め、フランスが逆転勝利。
どっちが勝ってもおかしくないゲーム。浅いライン、ロングパスが常識になった時代。どうラインブレイクするのか? FWが極度に強いオールブラックス以外、ディフェンスのシステムが整備された現在、その明瞭な解答を提出するチームはないようだ。