ニッポンのデザイナー展@ShiodomeItaliaクリエイティブセンター梅本洋一
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「AERA」のムック本と協賛して、「ニッポンのデザイナー展」が開催されている。建築家、プロダクトデザイナー、アートディレクター、インテリアデザイナー、デザインカンパニーなどデザインに関わる「ニッポン人」の多種多様な作品が展示されている。先日見た「柳宗理生活のデザイン展」の通り一遍の展示ではなく、それぞれの展示にも適切な解説が加えられ、ひとつひとつの展示物が興味深い。それに、もしレヴェルという言葉が適切ならば、どの展示物も非常に高レヴェルのデザイン性を有している。フェアレディZの模型などクルマのデザインも昔よりは相当良くなっている。
もちろん彼ら「ニッポンのデザイナーたち」は「ニッポン」の中でも例外的な存在であって、彼らのデザインが「ニッポン」のデザインのすべてではない。ダサイものもたくさんあるのは、街をちょっとでも歩けば分かることだ。でも彼らはパイオニアであって、パイオニアであるからには、彼らの仕事が他の多くの人々に影響を与えて、デザインの「レヴェル」は少しずつ上がっていくのだと思う。そしてパイオニアたちの仕事は、「ニッポン」ばかりではなく、世界のデザインにも影響を与えているのも周知の通りだ。
さて、新橋駅を降りて、このShiodomeItaliaクリエイティブセンターにたどり着くまでの風景は、「ニッポンのデザイナー展」の内部の風景とは正反対のものだったことは記しておくべきだろう。東海道線と東海道新幹線の数多くの線路が高架になっていて、それを挟むように向こう側には汐留の威圧感溢れる高層ビル街があって、こちら側にはイタリアの都市のようなファサードが続くShiodomeItaliaがある。どちらもまだ工事中で、鉄道の線路の高架周辺には、まだ荷役業者や流通など、かつてこの場所が汐留という貨物駅だったことを示す業者の古いオフィスビルが軒を並べている。工事に携わる人々以外、人影はまばらで、イタリア料理店やバールなども閑古鳥が鳴いていて、コンビニの弁当コーナーだけに人だかりがあった。もともと汐留の再開発にはコンセプトなどというものがなかったのだから仕方がないが、資本主義の実体化以外の何ものでもない巨大高層ビル群とこの見せかけだけのItaliaの不思議な対比。
「ニッポンのデザイナーたち」はこうした光景の前にいかにも無力だ。個々の仕事はあれほど素晴らしいのに、こうした風景のなりふり構わぬ浸食に何もすることができない。顔のない力の象徴である資本主義に、個々の力はこれからどうやって拮抗すればいいのだろう。それは「ニッポンのデザイナーたち」の課題であるばかりでなく、ぼくらの課題でもある。