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May 20, 2007

FAカップ決勝:チェルシー対マンチェスター・ユナイティド 1-0
梅本洋一

[ sports , sports ]

 今年のFAカップ決勝はチャンピオンズリーグの3位決定戦でもある。周知の通りベスト4のうち3チームがプレミア勢であり、決勝はリヴァプール対ミランというわけだから、チェルシー対マンチェスター・ユナイティドは3位決定戦ということになる。W杯でもそうだが、通常、3位決定戦はモティヴェーションが下がる。だが、それが幸いFAカップのファイナルでもあり、しかも改装なったウェンブリーのこけら落とし。
 FAカップのファイナルはよく延長に持ち込まれるがこのゲームも例外ではなかった。前半は、ディフェンスの対決、そして後半はアタックのかけ合い。とくにチェルシーは後半ジョー・コールに代えてロッベン投入で一気に攻勢に出た。だが、リオを中心にした守りにあい、点が取れない。そして延長、ギグスがボールごとツェフをゴールに入れたが、これはノーゴール。そしてその後にドログバ→ランパード→ドログバでマンUの中央をこじ開け、それが決勝点。プレミアシップをマンUに奪われ、リヴァプールに敗れたチェルシーの方がモティヴェーションが上だったということ。そして、今シーズンのマンUの特長であるクリスティアノ・ロナウドは疲労のためか動きにもボールさばきにもキレがなかった。
 しかし江戸時代から開催されているFAカップはやはりいい。賑々しい。そして、華がある。こういうものを伝統という。そして、今年の話題はもちろんこの決勝がチャンピオンズリーグの3位決定戦であることでもあるが、ウェンブリーのこけら落としだということでもある。高さ133メートルのアーチが斜めにスタジアムを跨ぐ新生ウェンブリー。設計はノーマン・フォスター卿。このフットボールの聖地の新生にあたり、その設計を現代イギリスの最大の建築家が担当したというわけだ。BBCサイトでこの建築家のインタヴューを聞いてみると、当初は4本のマストで屋根を吊るという計画だったが、次第にアーチというエレガントな形態が支配的になっていったという。このアーチは王冠のアーチでもあるのだとフォスターは語る。ロンドンの夜を明るく照らすこのアーチは明らかにロンドンの新たなモニュメントになっている。フォスターの高層建築をぼくは必ずしも好きではないが、モニュメントを作る建築家としてはyはり優れた人だろう。ドイツの国会議事堂も、香港の高層の銀行も、ロンドンのシティの再開発にもこの人は参画している。ミュンヘンのW杯が行われたスタジアムや北京オリンピックの主会場はいずれもヘルツォーク=ドゥムーロンの作品であり、造形的なオブジェの美が目立っているが、このウェンブリーは、やはりフットボールのモニュメントなのだ。
 9万の観衆に埋め尽くされたスタジアムは、キックオフ前にGod save the Queenが大声で唄われ、ファーガソンとモウリーニョがウィリアムズ王子に選手ひとりひとりを紹介していく。キックオフと共に大歓声。126年間1年に一度開催される儀式。フォスターのアーチはこういう儀式にぴったり合っている。