怒濤のテストマッチ・シリーズ梅本洋一
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公私ともに多忙なのにラグビーの重要なテストマッチが重なる。パシフィック・ネイションズ・カップのトンガ対日本戦、南半球遠征中のウェールズがワラビーズと2戦、イングランドがスプリングボクスと2戦、そしてフランスがオールブラックスと対戦。
まずジャパンのトンガ戦。結果は20-17の辛勝。勝つことが目的なら、この結果でまずまずだろうが、ゲームとしてはストレスが溜まる。相変わらずのSOの判断ミスの多さ。キックかパスかランか、選択肢は3つだ。それを常に適切に行うのがこのポジションの役割。安藤英次の選択肢からおそらくランはないと思うので、キックかパスかだ。その後に見たイングランドのウィルコはさすがに選択ミスはしないし、そのプレイも実に適切。2テストとも大敗したイングランドだが、ウィルコはウィルコだった。JKは安藤にチャンスを与えたと言うが、このSOは──何度も書くけれども──FWにプレッシャーがかかる中では使えない。ディフェンスは、フィジー戦よりよくなった。しかし、ディフェンスだけでは、勝ってもこんな点差だ。この試合の勝利は、むしろトンガのゲームメイクの悪さとシンビンによるラッキーなもの。ひとつでもPGを狙われれば同点だった。
ジャパンのテストマッチ放映が終わり、IRB主要国のテストマッチを見始めると、スキルのレヴェルがぜんぜん違うのを痛感する。前回のラグビー記事でスキルの問題よりも頭が悪いと書いたが、スキルも劣っているのだ。キックでもパスでもレヴェルが異なる。SOが蹴る「逃げ」のキックは、最低でもハーフウェイに達する。ほとんどの選手が平気でオフロードを繋げられる。線のラグビーが面になり、攻防に、より多くの可能性が生まれてくる。オールブラックスには大敗したがフランスのシャバルのように、誰よりも鋭い気迫でタックルに向かう選手がいる。ジャパンにはすべてが欠けている。だからJKが言うとおり、このチームにはまだまだ伸びシロがあるのだが、その空白を補うためには、信じがたい時間が必要になる。身長や体重に勝ることのない相手にスキルと気迫で勝利する体験を何度も積まねばならないし、ミスをしない相手のディフェンス網を一発で突き破る方法を考察しなければならない。フィジーやトンガ・クラスなら「勝負」になるだろうが、その上を目指すためには、「やるべき」ことが山のようにある。トンガ戦を見ても、1対1のせめぎ合いなら何とかディフェンスできるが、キックパスの多用でトライを狙うのだが、ジャパン・オリジナルだとしたら、そんな「オリジナル」は、もうずっと前からウィルコだって、ミシャラクだって使っている。かつてのジャパンを支えた名センターが持っていたパススキルはもう忘れ去れて、博物館にしまわれてしまったようだ。
IRB主要国では、スーパー14の決勝に勝ち残った余勢を駆って、スプリングボクスがすごい。ハバナの快走ぶりも、FWの推進力も。またオールブラックスでは、カーターの代わりに出たスコット・エヴァンスのパスワーク!イングランド、フランスはまだチームの形が見えない。