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July 26, 2007

アジアカップ準決勝:日本対サウジアラビア 2-3
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 ゲームからすでに1日。敗因の分析があちこちに掲載されはじめた。ぼくもおそらく日本が勝つだろうと思っていたが、こういうときは敗れるものだ。それがフットボールだ。
 こういうゲームは本当に難しい。最強と思われたオーストラリアをPK戦で退け、対戦成績の比較的良いサウジアラビア戦。移動とか休息とか様々な面で有利が伝えられる。UAE戦の後はほぼ固定メンバーで戦い、チームの「型」が出来上がりつつあると誰の目にも映ったろう。ゲームに入ってもキックオフ当初は圧倒的なポゼッションを誇り、どんどんパスが通る。ハーフラインまではノープレッシャー。ヴァイタルエリアに貼り付いたサウジの8人がさっぱり前に出てこない。俊輔が言う通り「8人で守り、2人で攻めるサウジ」。
 だがパスが回るだけでほとんどシュートが打てない。唯一崩して打った憲剛のシュートも、大きく枠を外れる。しかし、より詳細に見つめてみるとパスはほとんど足下であり、右右、左、左左右というリズムでサイドチェンジされる。大きくサイドチェンジされ、駒野や加地にパスが渡っても、すでに相手ディフェンダーに付かれ縦を切られて、マイナスのクロスは不可能。こういうゲームだと、気の利いた選手は、中央からドリブル突破を試み、ディフェンダーを惹き付けたところでサイドと考えるだろう。この日の日本は、だが、ひたすらパス回しに酔うばかり。それに厚いフォローがあるわけではなく、啓太の動きが鈍いし、彼のパスが何よりも弱い。2人のアタッカーがここを見逃すはずがない。
 確かに中澤、阿部の気迫で一時は同点に追いついたが、問題は、その後も同じ展開が反復されたことだ。次々に投入された日本のアタッカー──佐藤、矢野──は、いずれも使われるタイプで、自ら切り開いていくタイプではない。交代で憲剛も遠藤も退いたので、パサーは俊輔ひとり。前戦とディフェンスラインの間にスペースが生まれ、そこを羽生ひとりが埋めるのは無理だ。
 もちろんサウジのアタッカーのスピードを考えれば、このゲームに限っては、阿部ではなく坪井だったろうし、啓太ではなく今野だったろう。このチームの「型」から言って、憲剛、遠藤は代えるべきではなかったろう。巻というターゲットを失い、パサーが次々に減っていくわけで、その意味で、オシムはあまり選手交代が得意ではないようだ。センターフォワード出身の監督は、シューターを代えたくなるものだ。このゲームを采配で勝たせてあげたかったが、それも結果論かもしれない。もっと大局的に考えれば、オシムの走るフットボールは、東南アジアには不向きだ。スピードのないジーコ時代の代表やシステマティックなトゥルシエの代表の方が向いていたかも知れない。しかし、オシムが目指すところは、悪くないのだ。選手達のもう一段の成長を待つしかないか。彼自身が語るように、負けたゲームからの方が学ぶものは多い。もし采配で勝てれば、欠点を封印することになる。