教文館ビル@銀座梅本洋一
[ architecture , cinema ]
秋の到来を告げるような雨の中を銀座に向かった。『東京遺産』というDVDを見て、その中にバー「ボルドー」という短編を見たからだ。ボルドーは、新橋駅側の銀座中央通りから2本昭和通り側にある通りにひっそりと建っていた。この蔦の絡まる古い古いバーでゆっくりアルコールをいつか楽しんでみたいと思う。この辺にも銀座の再開発の波が本当にすごい勢いで訪れている。YAMAHAも解体され、工事中の塀に囲まれていた。5年前に、確かヤマハ・ホールで『アカルイミライ』を見たが、このホールへ向かう途中、交洵社ビルが解体されているのに気が付いたのだった。新たなYAMAHAは日建設計によるものだと表示されていた。デコラティフは古いビルばかりが好きなわけではない。YAMAHAはそれほど古くなっていなかったし、まだまだ現役のビルだと思っていた。
そこで、思いついて教文館ビルに行くことにした。理由は簡単だ。YAMAHAも教文館もアントニン・レーモンドの設計だからだ。早くしないと教文館もなくなるかもしれない。
「本の教文館」では何度も本や雑誌を買ったことがある。1階は狭くて立ち読みをしにくい本屋だ。だが、イエナ書店・近藤書店が銀座Dior(乾久美子)になってしまい、この辺で本屋は教文館と旭屋しかなくなったから、必然的に教文館にもよく来るようになった。書店としての教文館は、店頭でよく雑誌のバックナンバーを売っている店だ。本屋という性格上、なかなかビルの全貌を見る機会はなかったが、今日は立ち読みが目的ではない。松屋の前から見ると、何の変哲もない古びたモダンなビルだ。だが、モダニズムのファサードに沿って、並んでいる聖書館から正面玄関を入ると、アールデコ風の装飾と当時からあると思える大理石の壁がある。中央の階段ホールには同じ階段が2本、その左右にエレヴェーター。つまり、ホールで接触手いるが、これは2つの別のビルなのだ。階段の上にもアールデコ風の装飾。本屋からはまったく分からない。狭い敷地の中でかなり工夫しているビルだ。
4階にカフェがあるので入ってみた。隣はキリスト教グッズ売り場で、ここはもともとメソジスト派の出資によって作られたものであることが分かる。小さいカフェだが、銀座通りに面した窓際にカウンターがある。ゆっくりと銀座通りを眺めながらお茶ができる。カフェのメニューにはこのビルの由来とカフェへのリノヴェーションの方法が書いてあった。グッズを買いに来たおばさんのたちの会話がやや喧しかったが、銀座を、傘を差して歩く人々を眺めるのは気分がよかった。天井はそんなに高くないが、落ち着ける。松屋を見ると、現代的なファサードの裏にモダンな窓を配した裏側が見渡せた。ルイ・ヴュトンばかりが有名なこのデパートだが、中央のアトリウム風の吹き抜けとそれに各階から向かっている階段はとても工夫されている。『銀座の恋の物語』で浅丘ルリ子と石原裕次郎がこの階段で再会するシーンがあったのを思い出した。