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December 22, 2007

『スリザー』ジェイムズ・ガン
結城秀勇

[ cinema , sports ]

 エイリアンものとゾンビものとサイコキラー(地縛霊か?)ものを合わせたような作品である。といってもそれらの特色を適当につまんで盛り合わせたというものではない。この順番こそが大事なのである。エイリアン→ゾンビ→人間の怨念というシフトが、画面内の物体の運動速度を変化させる。
 宇宙からやって来た生命体が地球人に寄生し、だんだんその支配を広げやがて街全体が人間でない生物に変わっていく……なんてストーリーを説明したところでたいした意味はない。重要なのは画面内のものがどう動くかなのであり、あるいはどのように動かなくなるかなのである。映画の前半を支配する、エイリアン的な静から動の急激な運動は、化け物に変形してしまったヒロインの旦那が家畜を襲った後に逃げ去るその速度においてピークに達する。ゴキブリじみた丁度いい感じの気持ち悪い動きがCGによって描かれているのに好感を持つが、その後は宇宙人のリーダーの俊敏な動きが人間を襲うことはなく、その手下となった住民ゾンビの襲撃が続く。敵としては明らかに脅威が減っている彼らの緩慢な動きは、種の繁栄のための拡散する動きをとることはなく、むしろ速度を落としつつ一点へと集約していくのだ。それは、身動きの取れない巨大な特殊メイクの固まりとして結実する。映画内の「スリザー」という宇宙人の目的はさっぱりわからないが、この映画の目指すところは明確であり、街中に人々がただぼろぼろ転がっているラストシーンはかなりの見物である。
 余談だが、先日ルーク・ウィルソンが主演しているという理由だけで見に行った『モーテル』(ニムロッド・アーントル)というヒルビリー・マサカー(そこに虐殺などないのだけれど)は、きっとこれを作っている人は映画のスクリーンに本当に怖いものが映っているのを見たことがないのだろうなと思わせるようなものだった。その点、ジェイムズ・ガンはスクリーンで何を見せるべきなのかということを抑えているように思った。

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