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July 29, 2007

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ
結城秀勇

[ book , photo, theater, etc... ]

 冒頭に引用されているフランク・キャプラ『素晴らしき哉、人生!』のジェームス・スチュアート=ジョージ・ベイリーと同様に、男ふたり女ふたりの子供たちを持った男にまつわる物語である。この作品の前作『舞踏会に向かう三人の農夫』同様、時系列の異なる3つのパートが絡み合いながら進むという形式を持っているが、この作品が書かれた(80年代末期という)時代を前作よりも濃厚に感じさせる。それは物語上の問題として、実...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:20 PM

July 26, 2007

アジアカップ準決勝:日本対サウジアラビア 2-3
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 ゲームからすでに1日。敗因の分析があちこちに掲載されはじめた。ぼくもおそらく日本が勝つだろうと思っていたが、こういうときは敗れるものだ。それがフットボールだ。  こういうゲームは本当に難しい。最強と思われたオーストラリアをPK戦で退け、対戦成績の比較的良いサウジアラビア戦。移動とか休息とか様々な面で有利が伝えられる。UAE戦の後はほぼ固定メンバーで戦い、チームの「型」が出来上がりつつあると誰の目...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:29 PM

July 22, 2007

アジアカップ準々決勝:日本対オーストラリア 1-1(PK4-2)
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 オージーはこの日トライネイションズ、アジアカップで代表チームが連敗。もっともトライネイションズの方は、相手がオールブラックスなので、まだ傷は浅いかも知れないし、もともと勝つ可能性はそれほど大きくなかったし、その健闘は称えられてもいい。だが、アジアカップでのPK戦敗退は、このチームのこれからの方向性を決めるのに、大きな瞬間になるだろう。オーストラリアはわざわざアジアサッカー連盟に加盟し、W杯ベスト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:29 PM

July 18, 2007

『石の微笑』クロード・シャブロル
梅本洋一

[ cinema , cinema ]

 かつて、当時の夫人だったステファーヌ・オードランを使って、シャブロルは次々と傑作を生み出したことがあった。ジャン・ヤンヌ、ミシェル・ピコリといった怪優を相手に、小さな町の空間で繰り広げられる行き詰まるような瞬間は、極めて濃密な作品を作り上げてくれた。そして今、70代も中盤を迎えた彼は、自らのフィルムの虚飾を剥ぎ落とし、文字通りの絶頂期を迎えたのではないか。  大きな工場と港、そして、そこから展開...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:20 AM

July 17, 2007

『ザ・フューチャー・イズ・アンリトゥン』V.A.
結城秀勇

[ music , photo, theater, etc... ]

 今年9月に公開予定の映画(邦題『LONDON CALLING/ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』)のサントラである。『レッツ・ロック・アゲイン』『VIVA JOE STRUMMER』などストラマーの死後、彼についての何本かの映画が公開されている。正直、またか、と思わないでもないが、この映画に少なくともひとつの見るに値する部分があるとすれば、それはジョー・ストラマーの声をもとに彼の人生を再構成して...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:34 PM

July 15, 2007

アジアカップ2007:日本対UAE 3-1
梅本洋一

[ sports , sports ]

 相手の監督がブリュノ・メツということもあり、UAEはかなりやるのではないかと思ったし、前戦の日本の出来が非常に悪かったので、このゲームがこの大会のこのチームの将来を占うものだと考えていた。  結果は見ての通り、日本の圧勝。最後の10分間の相手を「ほかす」プレーは貫禄ものだった。2ゲームを見た限りでは、敵は相手チームではない。東南アジア特有の蒸し暑さだ。かつてシンガポールへ行ったときのことを思い出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:41 AM

July 9, 2007

アジアカップ2007:カタール対日本 1-1
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 勝てるゲームを引き分けてしまった。そう誰でもが書くだろう。阿部の与えたFK。そのときの壁の作り方も隙があった。セバスティアンの蹴った低い弾道のシュートがゴールマウスに吸い込まれる。川口は、あってはならないことが起こってしまった。オシムは憤懣やるかたない様子。  だが、ゲーム自体はまったく消化不良。こんなゲームをしていては、3連覇はおろか予選リーグも危ない。暑さと湿気は分かっている。でも、全員がこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 PM

『前巷説百物語』京極夏彦
結城秀勇

[ book , cinema ]

 直木賞を受賞した『後巷説百物語』に続く「巷説百物語」シリーズの最新刊では、前作までの時代設定を遡り、このシリーズの中心人物である「小股潜りの又市」が「御行」というキャラクターをいかにして獲得したかという物語が語られる。『バッドマン・ビギニング』『ハンニバル・ライジング』『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年版)などを思い出してしまうような、ヒーロー誕生秘話。前作までは、裏の世界にその名を轟か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:51 PM

July 5, 2007

『宿澤広朗 運を支配した男』加藤仁
梅本洋一

[ book , sports ]

 このサイトにも宿澤広朗の追悼を書いたことがある(2006年6月17日)。そのときに「ジャパン対サモア戦のある日になんで登山に行ったのだろう」と文章を締めくくったことを覚えている。実際にラグビーをやっていたわけでもないのに、本業をできるだけ早く片付けてテレビの前に座って、何十年も観戦を続けているぼくよりも、「名選手にして名監督」だった宿澤は、ラグビーのゲーム──しかもジャパンのゲームだ──に関心を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:48 PM

July 4, 2007

『ボルベール』ペドロ・アルモドバル
宮一紀

[ cinema ]

 アパートのキッチンに血に塗れた男が倒れている。今回もまた「血」が問題になっている。アルモドバルにおける「血」とは、先祖から脈々と受け継がれる血縁の証明であり、性交渉においてエイズウィルスの感染する経路であり、そして人が傷つくことである。すなわち家族、セックス、暴力ということになる。アルモドバルは、少なくとも1982年の『セクシリア』以降、これら三つのテーマを中心に据えて映画を撮ってきたといえる。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:07 AM

July 3, 2007

『ボルベール』ペドロ・アルモドバル
梅本洋一

[ cinema ]

 『キカ』『私の秘密の花』あたりから、アルモドバルは、キッチュで「罰当たり」で「変態な」映画作家から、現代映画きっての「メロドラマ作家」へと次第に変貌していった。もちろん、その背後には、アルモドバルの成熟もあるのだけれど、それ以上に、時代の変化が大きいと言えるだろう。同性愛も性転換も近親相姦もそれだけでは、スキャンダラスな話題であり得なくなった時代にぼくらは生きている。かつてなら、それだけで「反社...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:29 PM

July 2, 2007

エドワード・ヤン追悼
梅本洋一

[ cinema , cinema ]

 朝刊の死亡欄のエドワード・ヤンの文字と写真が目に入る。  突然蘇るいくつかの光景。  91年の東京映画祭『クーリンチェ少年殺人事件』を見た晩のこと。翌日に彼に会うために赴いた、今はなきキャピタル東急ホテルでのロビーでのこと。ハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』の話をしていて──その映画は『クーリンチェ』にとってとても重要なものだ──ふたりで涙ぐんでしまったこと。その直後に行った山形映画祭での数...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:45 PM

『殯の森』河瀬直美
田中竜輔

[ cinema , cinema ]

自身の作品をエンターテイメントとして消費されるものだとは考えてはいない、と自称する河瀬直美の、そしてカンヌ映画祭でグランプリを獲得した『殯の森』は、間違いなく「作家」の映画であるはずだ。このフィルムには妻を失った老人と子を失った若い女についての物語があり、そこには河瀬直美の「生」と「死」についての思索が充満しているのだろう。このフィルムにおいて、うだしげきと尾野真知子という二人の主要なキャストは、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:26 PM

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