2008シックスネイションズ スコットランド対フランス 6-27梅本洋一
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このゲームを見た人なら、明らかな変化が分かる。ベルナール・ラポルトのグローバリズムのラグビーと、マルク・リエヴルモンのフランス・ラグビーの変化が分かる。ラポルトは確かにコレクティヴなディフェンスを導入し、なかなか負けないチームを作るには作った。だが、W杯で、それは決してよい結果をもたらしてはくれなかった。深夜、眠い目を擦りながらライヴの映像を眺める眼差しには、朦朧とした反復しか見えなかった。ディフェンスのフェーズの反復。確かに、それも重要だが、ラグビーはトライを取るゲームであり、それもモールのごり押しでヴィデオレフリーでも大男たちの下にあるボールが確認しがたいスローモーションのトライではなく、誰の目にも鮮烈なスリークォーターで取りきるトライ。それがラグビーだ。
マルク・リエヴルモンは、「フランス・ラグビーをフランス化」している。ディフェンスのフェーズからターン・オーヴァーしてキックという選択ではなく、たとえセットピースで劣勢でも、工夫のあるパスプレーで相手のディフェンス網を切り裂くことを常に心がける。ピエール・ヴィルプルーを待つまでもなく、「フランス・ラグビー」とは、そのための想像力と創造力の結集なのだ。ボクシス、スクレラというキッカーをスタンドオフに配するのではなく、ノン・キャップのフランソワ・トラン=デュックを自信を持って送り出したリエヴルモンの意図はそこにある。そして、俊足のバック3で勝負。さらにバックラインに入っても充分いけるフランカー。
確かに両プロップはやや力に欠けた。スクラムはイーヴンにまで持っていけなかった。エリサルドのPGは2度連続ゴールをそらした。でも3トライの完勝。何度もループを繰り返す多様なライン攻撃。かつてのジャパンのようなすれ違いざまのパスで抜けようとする試み。スコットランドに体重で劣るFW。ポゼッションでようやくイーヴン。しかし、完勝。
願わくば、欠点の克服ばかりにこれからの強化の方向が向かわないこと。スクラムはもう少し強い方がいいが、それよりもラインにより大きな速度を。スピードのないロングパスよりも速いショートパスの多用を。次戦のアイルランド戦が楽しみだ。