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February 26, 2008

マイクロソフトカップ決勝 サントリー対三洋 14-10
梅本洋一

[ architecture , sports ]

 懸案の優勝を手にした清宮の満面の笑顔とは反対に、ぼくらは退屈のあまり訪れた眠気を払うのに精一杯。強風の中、しかも、サントリーのゲームメイクは徹底して相手の長所を消す作戦。テリトリー関係なくモールに拘り、そこからボールを出すのをどこまでも遅延させ、「ゲームを殺す」やり方。秩父宮に行かないでモニターの映像を眺めていて、トイレに行って帰っても同じ場面ではないかと思えるような展開。SHの田原は、声を出しはするもののモールサイドにボーッと突っ立っている。
 ゲームは勝つことが正しい。然り。相手の長所を消して、自分たちの優れている部分で戦うことが正しい。然り。昨年の雪辱を果たすためには、何よりも──ラグビーの美学よりも──勝つことが正しい。然り。後半、小野澤がモールサイドを疾走した速度が信じがたいものだと思えたのも、それまでの遅延と停滞にぼくらが慣れてしまったせいだろう。三洋も同じかもしれない。トニー・ブラウンだけが、この遅さに危機を感じてモールやラックでターンオーヴァーを狙うが、いかんせん多勢に無勢。
 三洋はモールとラインアウトに弱いというのは衆目の一致するところだが、モールならば、相手よりも人数を多くすることで劣性は解消できるかもしれないし、スロワーを鍛え上げることでラインアウトは取れるようになるかもしれない。つまり、ゲームを殺そうとするサントリーに対して三洋はあまりにナイーヴなのだ。ターンオーヴァーからのアタックが三洋の持ち味だとしたら、ターンオーヴァーさせないことがサントリーの作戦だ。だとしたら、遅延するゲームをマイボールの局面なら、その速度を上げることでイーヴンに持って行くことが可能かもしれない。確かにノーサード間際の三洋はそのことに気づいて猛攻を仕掛けるが、そこからはサントリーの我慢のディフェンスが功を奏する。
 いずれにせよ、こういうことだ。三洋でゲームを読めるのが、トニー・ブラウンひとりであるのに対して、サントリーは当初からのゲームプランを粛々と実行し、それによって勝利を収めた。清宮の想定外のことはひとつも起きなかった。