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March 7, 2008

チャンピオンズリーグ決勝ラウンド ミラン対アーセナル 0-2
梅本洋一

[ sports ]

「われわれは自信と成熟と才能と知性で戦った」。アルセーヌ・ヴェンゲルは、ミラン戦後そう述べている。老獪なチームを「スタイル」が打ち破ったことは大きな価値がある。「負けない」ことは、確かに重要なのだが、フットボールとはスタイルの戦いなのだ、と信じている者たちにとって、「負けない」ことは結果であって目的ではない。タイムアップのホイッスルが鳴って、その結果がドローなのは仕方がないが、それまでにどう戦ったのかが、結果よりももっと重要なことだ。そして、明瞭な目的はゲームに勝つことであり、とりわけ自分たちの「スタイル」でゲームに勝つことがチームのトレーナーたちにとって、究極の目的になる。
「フレブ、フラミニ、セスクの3人に敗れた」とはアンチェロッティの言葉だ。サンシーロで、カカ、アンブロジーニ、ガットゥーゾ、ピルロの中盤が、アーセナルのスピード感溢れたミドルレンジのパス交換に完膚無きまでに叩きのめされた姿は、アンチェロッティの目に明らかだったのだろう。セードルフという「タメ」を作れる選手がいなかったとはいえ、もう1回戦っても同じ結果だろうとしか思えない力の差。
 もちろんアーセナルにしても、これがベストでは、この上はない。この日、ディアビ=クリシ、エブエ=サニャはあまり機能していなかった。ディアビの外側、エブエの外側をもっと速度を上げて、サイドバックが疾走すれば、ミラン・ディフェンスはもっと早くに決壊していたにちがいない。マルディーニ、オッドのスピードで両翼のミッドフィールダーの外側を抑えることはできない。このゲームにしても、両翼のケアのためにセスクへの対応が淡泊になったガットゥーゾがシュートコースを開けたのが、直接的な敗因になる。
 そして1点奪われると前に出なければならなくなるミランを仕留めるのが、エブエに代わって登場したウォルコットの仕事だ。右サイド(ここれはマルディーニの場所)を破り、アデバイヨールにグラウンダーのクロスが送られると、アデバイヨールは、面を作るだけで、ボールはミランのゴール・マウスに突き刺さった。