2008シックスネイションズ ウェールズ対フランス 29-12
2008ラグビー日本選手権決勝 三洋対サントリー 40-18梅本洋一
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ウェールズがフランスに完勝し、ウェールズが久しぶりにグランドスラムを成し遂げた。ワールドカップでは評価を下げたチームをここまで再生させたのは、ヘッドコーチに就任したウォレン・ガットランドの力だ。彼は、特別なことをしたわけではないのだが、セクシー・ラグビーに呼ばれたウェールズが、低迷した原因を手際よく立て直した。まずはディフェンス。そのセオリーを遵守し、このシックスネイションズで与えたトライはわずか2トライ。「まずディフェンス」という常套句は、言い古されてはいるけれども、常に正しい。初戦のイングランド戦の後半で勝負をひっくり返して勝ったことで波に乗った。負けないことでこのチームに誠実さが甦り、トライを取ることでチームに活気が生まれる。リー・バーン、シャンクリン=ハンセン、そしてシェーン・ウィリアムズの持っている潜在能力を完全に引き出し、負けないチームから勝つチームへと、このシックスネイションズの間にウェールズを変貌させた。
それに対して、このゲームに勝利すればシックスネイションズ優勝をたぐり寄せることもできたフランスは、この完敗で3位に沈んだ。初戦に見せたフレアの復活の兆しも、試合をこなす毎に次第に薄くなり、このゲームではW杯のフランスに逆戻りだ。トラン=デュックではなく、スクレラを先発させ、彼の弱気によって、士気がどんどん萎えていく。エリサルドの捌きも遅い。ジョジオン=トライユの「昔の名前」コンビもウェールズ3列とシャンクリン=ハンセンのプレッシャーにラインブレイクできないし、クレール、マルジューの高速ウィングにスペースを与えることができない。尻つぼみに終わった。
ウェールズが自らを見失った期間が短かったのに対して、やはりラポルトの8年間は、リエーヴルモンの4ヶ月で立て直せるものではないのだろう。ずっと初戦の実験を貫けば良かった。イングランドに負けてから、弱点の強化に走り、「昔の名前」に頼ろうとした。テストマッチのそれぞれの戦いが「実験室」になっては、ゲームがつまらなくなる。リエーヴルモンは、もっと大胆に!
そして三洋対サントリーも三洋の完勝。この完勝もウェールズと同じように賞賛されるべきだ。サントリーに、メイリング、佐々木というキープレイヤーの欠場があったにせよ、サントリーの遅さを、三洋の速度が完全に切り裂いて見せた。戦前に、宮本は「真っ向勝負をしようぜ」と清宮を牽制したが、日本選手権のファイナルなのだ。「真っ向勝負」以外の何があるというのか。それに対して、清宮は、マイクロソフトカップ決勝と同じ作戦。ゲームを殺しに来た。やはりこれは「健康」なことではない。そして、殺すために必要不可欠な人材であるメイリングを欠いても同じ作戦。
結局、サントリーは、三洋の3列のふたりのランナーにゲインを許し続け、だんだん疲労をつのらせていく。マイクロソフト決勝のようなゲームをやっていいのは、日本ラグビー全体の底上げが済み、W杯8強に匹敵する力を持ってからのことだろう。それにしても、サントリーのディフェンスがこれほど弱いとは! 受けに回っていたとはいえ、芯を捉えるタックルからターンオーヴァーへ、という方法が、「真っ向勝負」の三洋に対して有効だったと思うが、肝腎のタックル力がこの程度では、もっと誠実にベイシックなスキルを磨くことだ。常にチャレンジングなラグビー、クリエイティヴなラグビーを続けなければ、ラグビーそのものの進歩はない。清宮には猛省を求めたい。