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July 5, 2008

レーモン・ドメネク留任!
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 イタリアではドナドーニが解任されマルチェロ・リッピが再任されたというのに、フランスでは、レーモン・ドメネクが代表監督として留任した。ユーロのグループCを最下位、しかも得点1,失点6という最悪の成績であるにも関わらず、昨日フランス・フットボール協会のジャン=ピエール・エスカレット会長はドメネクの留任を発表した。ぼくも含めて誰でもが、すんなりディディエ・デシャンにその任が任されると考えていたのに、フランスの人事は、日本のそれと同じようにさっぱり分からないものだ。
 報道(エキップ誌とエスかレット会長の記者会見のYoutubeを参考にしている)によると人事委員会でドメネク支持が19人中18人! とくに影響力のあるプラティニとウイエの意見が尊重されたとのこと。エスカレット会長の記者会見によれば、こうした人事は大きな2大会の評価によるものであり、つまり、2006年のドイツW杯と今回のユーロがそれに当たり、W杯では準優勝という優秀な成績を収めているというのだ。もちろんレブルーはもっと開かれたものにならねばならないとも付け加えている。
 信じられない、との思いは誰にでもあるはずだ。プロフェッショナルというものは、成績によって判定されるものであり、決して政治的な選択の結果ではないだろう。かつてフランツ・ベッケンバウアーは、「強い者が勝つのではなく、勝った者が強いのだ」という名言を吐いたことを思い出す。だが、今回のユーロのスペイン優勝は、勝った者と強い者についてのベッケンバウアーの名言を棚上げにして、勝った者と強い者を等号で結んでくれた。それに比べて、レブルーは、その潜在能力についてはスペインに匹敵するかも知れないが、その潜在能力が開花するのを押さえ込んだのは誰あろうレブルーの監督自身だった、というのが大方の見方だった。確かにドメネクは、レブルーのセレクショナーになる前は、フランスのユース代表の監督であり、もともと潜在能力の開発には優れていたはずだ、というのがエスカレット会長の意見だ。だがフットボール・ジャーナリストたちもこう考えている。この決定は暫定的なものではないか。2010年のW杯南アフリカ大会の予選の日程が近く、9月と10月には、対オーストリア、セルビア、ルーマニアの連戦が控えており、ドメネクの進退はその結果で判断されるのではないか。したがって「ドメネクにはほとんど時間が残れていない」というのだ。
 それさえも好意的な観測だ。世界のフットボール日程はかなりタイトで、時間が止まることはない。それを一瞬停止できるとしたら、そのチャンスは今しかなかったのではないか。そしてそのチャンスはフランスは逃してしまった。ぼくにはそう思える。