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November 24, 2008

ラグビーテストマッチ 日本対アメリカ 32-17
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 テストマッチ2連戦2連勝は、ニュージーランダーやアイランダーに頼った日本代表が戦術的な的を絞ってある程度レヴェルアップできている現状を伝えているだろう。新ルールに則って、積極的にキッキングゲームを仕掛け、それにSOのウェブがうまく応え、ニコルス、ロビンスの両センターを核として安定したゲームを組み立てている結果である。ジョン・カーワンの手腕は確実で、ステップ・バイ・ステップ、日本代表を上昇させている。
 だが、瑞穂の第1戦(29-19)とこの日の第2戦を見ていてもさっぱり盛り上がらないと感じるのはなぜだろうか。それがぼくだけの感覚ならけっこうなことだが、そういう意見は決して少なくない。まずアメリカが強くないこと。11月はラグビーのカレンダーだと遠征時期に当たっているが、アルゼンチンを含めたトップ10か国以外は、なかなか強い相手とマッチメイクできないのは事実で、この晩の秩父宮にせよ、どこかの広告代理店が仕掛けた無惨なばかりのお寒いオープニングセレモニーと同様、観客席には空席が目立っていた。つまり、たとえアメリカに勝ったところで、これまでも勝ったり負けたりしているわけで、大して話題にもならないし、アメリカの選手と日本代表の選手ではそれほど格の違いはないだろう。今までも一生懸命やれば勝てる相手だったし、今回はメンバーも揃い、勝つ確率は上がっている。SHの三洋の田中とFBのヤマハの松下、それにサントリーの2番と3番──彼らが計算できる選手に成長したのを感じさせるほか、発見はなかった。
 つまり、日本人のアジリティを活用するというジョン・カーワンHCの言は、チームに反映されていない。彼にとって──おそらく誰にとってもそうなのだが──信頼に足るのは、ニュージーランダーたちであって、日本人の中からロングキックを安定して蹴ることができるSOはいないし、オフロードでパスをつなげるセンターもいない。トップリーグが始まってから数年経つが、各チーム毎の差異は次第に薄れて、結局、「世界標準」に近い平均的なラグビー・スタイルを持つチームが上位に来ることを思い浮かべれば、彼の方法が最も早く「世界」に近づく方法なのだろう。
 一見、理にかなったことだが、理にかなっているからこそ、このチームにはワクワクさせるものがない。すべてはぼくらの予想通りに進み、まったく驚きを感じさせない。ワクワク感のなさはそこに起因している。スタイルの戦いというラグビーの大きな楽しみが稀薄になっているのである。ラグビーよりももっとグローバルなもうひとつのフットボールは、そのグローバル化の速度に反比例するように、独自のスタイルが磨かれ、カテナッチョでもローテーションでもいいけれど、イタリアならではの、オランダならではのスタイルが洗練されているというのに、ラグビーは、どこでも同じようになってしまった。これからジャパンを伸ばすには、130キロある両プロップを捜し出し、200センチの身長を持つロックをどこぞの国からリクルートすればよいのだろうか。両センターにしても、ずっと前からオフロードのできるスキルを持った奴らを日本に数年住まわせれば、問題が解決するのだろうか?