セスク・ファブレガスの負傷梅本洋一
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リヴァプール戦の前半終了間際、シャビ・アロンソとの攻防でセスクが倒れる。びっこを引きながら退場し、彼の代わりに後半開始から現れたのはディアビだった。重くなければいいが、と思うのは、アーセナル・ファンなら当然のことだろう。ギャラスに代わってキャプテン・マークを巻き、若いガンナーズの象徴であるこの選手を失えば、このチームの輝きの約半分はなくあってしまう。ちょっと行き詰まっていたので、この交代が吉と出ればいい、との川勝良一の言葉に耳を疑ったのはぼくばかりではないだろう。1-1のタイだとはいえ、誰の目にもリヴァプールの優勢は動かない。ソングとセスクの中盤を潰し、左右にパスを送って、リエラ、カイトを走らせ、サニャとクリッシの上がりを押さえ込み、サイドを崩しながら、中央に待ちかまえるキーンにボールを送って、そこへジェラードとシャビ・アロンソが走り込む。左のナスリも右のデニウソンも攻撃に絡めない。完全に押し込まれた状態のアーセナル。ベニテスは腎臓結石で携帯電話で指示を送っているようだが、4-2-3-1のリヴァプールの2と3でアーセナルの心臓を完全に押さえ込んでいた。ナスリのロングパスからファン・ペルシの個人技で1点を取ったのもラッキー以外の何ものでもない。その直後に、あのロビー・キーンが目の覚めるようなシュートを放ち同点。何度もアルムニアのファンセーヴがあって、ようやく同点で持ちこたえている状態だった。セスクが今の2倍以上頑張らなくては、このゲームに勝ちはない。その彼が怪我だ。
後半、左サイドにディアビ、右にナスリを回し、デニウソンを一列下げ、ソング、デニウソンのセントラルになったが、いくらマスケラーノが風邪でいないからといっても、ジェラード、シャビ・アロンソと並ばれると、名前負け! ポゼッションは完全にリヴァプール。それにアデバイヨールがイエローを2枚貰って退場のおまけ付き。セスクからキャプテン・マークを引き継いだ好調アルムニアのセーヴでなんとかドローに持ち込んだ。
勝たなければプレミアシップを諦めざるを得ないという論調が現実味を帯び始めたころ、セスクの容態が発表された。膝の靱帯の一部損傷で全治四ヶ月。ヴェンゲルならずとも溜息をついてしまう。そこへコロ・トゥレにマンCが触手を伸ばしているというニュースまで伝わってくる。”No! No! No!”とヴェンゲルは、オバマを真似て(?)ノーと3回言ったが、これほど「呪われた」という言葉がふさわしい状況はないだろう。いくら若手の育成に定評があるといっても、何度も書くが、ヴェテランあっての若手だ。ミッドフィールドに経験豊かな選手が誰もいなくなってしまった。開き直りと英語で何というのか知らないが、もう開き直ってスクランブルしかないだろう。かつてボランチだったコロ・トゥレをバルサの弟のようにボランチに入れ、守備を安定させ、思い切ってナスリをセスクの位置に置く。左にディアビ、そして右ワイドにエブエ。幸いプレミア有数の両サイドバックはまだ健在だ。とりあえず、この布陣なら、失われた速度は戻ってくるだろう。ラムジーやウィルシャーを控えに使って両サイドの充実を図り、デニウソンとソングはボランチの控えに置いておく。
4位をキープし、なんとか来年のチャンピオンズリーグの出場権内を保ち、今シーズンのチャンピオンズリーグは、この布陣で全力投球。それしかなかろう。来年初頭に当たるローマの大黒柱トッティも怪我をしたらしい。