08-09ヨーロッパジャンプ週間梅本洋一
[ cinema , sports ]
今シーズンの4ヒルズは予定通り行われた。昨年はインスブルックがキャンセルになり、ビショクスホーフェン2連戦、しかもノットアウト方式ではなかったから、ちょっと興ざめ観があったし、優勝したのがアホネンだったから、時間が止まったような気がした。
今シーズンは従来通り。しかも、かなり高レヴェルの戦いが繰り広げられたと思う。マルティン・シュミットの本格的なカムバック、そして五輪を控えるロシアのヴァシリエフの活躍、今シーズン絶好調のシモン・アマン、才能を開花させ2本揃えるようになったロイツル。モルゲンシュテルンは不調だけれど、その4人に天才シュリーレンザウエルが加わって、どのジャンプ台でもヒルサイズを2本揃えるかどうかの戦いになり、ジャンプの醍醐味を堪能した。
もっとも注目は、やはりガルミッシュ、インスブルック、ビショクスホーフェンを3連勝したロイツルだ。昨シーズンまでは、たまにベスト10に入るし、ときにスーパージャンプを見せるが、決してベスト3の選手ではなかった──年齢も今年29歳になる──が、今シーズンなぜか常にベスト3に入る活躍を見せている。もちろん、才能はあった。だが2本揃えられなかった。今年はもちろん距離も行くけれども、何と言ってもかつての船木のように飛型点が常に満点なのだ。だから崩れない。だから、距離が出る。きっかけというのは恐ろしいと思う。突然の開花というのはよくあるけれども、これほどまでに完全に満開になる選手はそんなにいなかった。船木にせよシュミットにせよ、そしてモルゲンシュテルンにせよ、デビューからぶっちぎりで強かった選手はいるが、ヴェテランの域になって突然活躍する人は滅多にいない。
そして日本チームは? 葛西(まだ頑張っているぞ!)が得意のインスブルックで6位入賞したのが最高のリザルト。今シーズンW杯で初優勝した湯本も、去年は1本目だけだったが、5位に入った栃本も、竹内も渡瀬も、そして伊東もダメ。2005年のビショクスホーフェンでシャンツェ・レコードを作った伊東も、今年は、それよりも十数メートル足りない距離しか飛んでいない。2本目に残るようになった人数が去年より多かったので着実に成長していると報道されるが、やはり優勝争いの中に誰かひとりでも残らなければ、栄光という名詞に常に「かつての」という枕詞が付くだけだ。それぞれの距離が十数メートル足りない現状はまったく同じだ。日本チームにはひとりもロイツルのようにヴェテランになって開花する選手がいない。好成績といってもひと桁に入ることはほとんどない。かつての小野学ヘッドコーチはその辺りの原因をどう考えているのだろう。バイツ、ユリアンテラとヘッドコーチに恵まれていない気もするのだが……。