『ランド・オブ・ウーマン/優しい雨の降る街で』ジョナサン・カスダン結城秀勇
[ DVD , cinema ]
日本では劇場未公開、昨年11月にDVDリリースされた一本。2/13発売の「nobody」29号では2008年に出たDVDスルー作品の星取をおこなっているが、その中でも、『マーゴット・ウェディング』(ノア・バームバック)や『ロビン・ウィリアムスのもしも私が大統領だったら……』(バリー・レヴィンソン)などと並んで評価の高い一本だった。
ということで見てみると、メグ・ライアンがいい。無根拠な断言だが、たぶんメグ・ライアン史上最もいい時期にいま差し掛かっている。もっと歳を取っても良い。この作品ではお母さんだが、早くおばあちゃん役をやって欲しい。だが、このライアンの良さもこの作品の魅力の一部に過ぎず、タイトル通り魅力的な女性たちの大地を構成する媒介になっているのはアダム・ブロディだろう。ちょっとマーク・ウォルバーグにも似ている(トイレの鏡の前で「ガンバレ、俺」とやるシーンもある)。
この作品を見ながら、ロブ・ライナーの『迷い婚』を思い出した。男性ひとりに対して異なる世代の女性が何人かという構図しか共通点はないのだが、ある家族の女性三代に渡って、彼女たちを(比喩的にも即物的にも)貫くケヴィン・コスナーの存在と、自分の母と祖母、隣家の母娘、そして元恋人に囲まれたわずかな隙間の中に存在するアダム・ブロディが、奇妙な対称をつくっているように思えた。彼はなにかを貫くほど鋭くとがることもできず、それぞれの女性が持つテリトリーに圧迫されている。迫り来る死に、出生の疑問に、女性の唇に、圧迫されている。そもそも彼に訪れた悲劇を出発点としながらも、彼自身の悩みなどまるでちっぽけなものに過ぎないかのように、痛みや孤独や愛といった激しい感情は、周りのそれぞれの女性たちの中に膨らんでいく。彼自身はただそれらを、クッションのように不格好に受けとめるに過ぎないのだが、その演出がクド過ぎも淡泊過ぎもしない絶妙な味付けになっている。これを公開しなかったのは本当にもったいない!