“Let’s Stay Together”Live @ the 51st Grammy Awards黒岩幹子
[ cinema , music ]
8日に行われたグラミー賞授賞式のライヴ・パフォーマンスを動画サイトであれこれチェックして、T.I.+JAY-Z+リル・ウェイン+カニエ・ウエスト+M.I.Aの競演やらロバート・プラントの後ろで湿った音をかき鳴らすTボーン・バーネットの存在感やらを堪能していると、アル・グリーン先生が何故かジャスティン・ティンバーレークと“Let’s Stay Together”をデュエットしている動画を発見。
ノミネートもされていた去年出た名作『Lay It Down』の曲をやらせないばかりか、よりによってこんなほっそい声の若造と“Let’s Stay Together”を歌わせるとは、グラミー関係者め、アル・グリーンをなめとんのかい! と憤慨しかけていたら、ジャスティン君が先生はもちろん、何故かギターを弾かされてるキース・アーバンやバックコーラスをやらされているボーイズⅡメンを立てようとやたらと一生懸命。聞けば、彼氏(クリス・ブラウン)にDV受けて出られなくなったリアーナの穴埋めで急遽やらされたライヴで、グリーン先生は式開始3時間前にピンチヒッターの打診を受けたのだという。
それで快く歌い、アドリブ入れまくるグリーン先生はもちろんさすがだが、いきなり「アル・グリーンと一緒に歌ってくれ」と頼まれ、それをこなせるジャスティン君も度胸がある。というか、ここでのジャスティン君は自分の歌唱アピールを二の次にして接待役に徹しており(単にぶっつけで声が出てないだけとも考えられるが)、先生とハモる時に楽しげに寄り添う姿はまるでスナックのママさんのようですらある。
これは言ってみれば浜崎あゆみの穴を埋めるべく歌うはめになったサブちゃんを盛り上げるために、氷川きよしやらモー娘。やらが駆り出されるようなものだが、まず歌の前に自分がいかにこの先達の曲を聴いてきたかを語って呼び込み、観客を煽り、大先輩を乗せ、そのアドリブに何とか対応し、バックのギタリストやコーラスへの気配りもちらほら見せ、かつ自分が楽しんでいる様子を見せるのも怠らないという芸当は、きよしや娘。はもちろんのこと、日本の若き芸能人にはできまい。そしてアメリカの芸能界にもまたそういう役回りをこなすことができる助太刀アイドル歌手は数少ないのだろう。
歌はろくに聴いたこともなく、出演映画を見ていらつくこともあったジャスティン君。彼の芸はなくとも瞬時の対応力でどうにかショーを成立させんと奮闘する姿に、エンターテイナーの気概を感じた。そして、その気概がアル・グリーンと“Let’s Stay Together”を輝かせていたように思えた。