『スモーキング・ハイ』デヴィッド・ゴードン・グリーン結城秀勇
[ DVD , cinema ]
『無ケーカクの的中男/ノックトアップ』の監督ジャド・アパトー、主演セス・ローゲンによるプロデュース作品がまたDVDスルーでリリースされた。アパトープロデュース作品は去年から今年にかけてだけで5、6本あるんじゃないだろうか。本作品では主演のセス・ローゲンが、『スーパーバッド/童貞ウォーズ』でも組んだエヴァン・ゴールドバーグとともに、脚本に参加している。『無ケーカクの~』でも異彩を放っていた「ユダヤ人」ギャグはローゲンの持ちネタなんだとか。
以前ここで『無ケーカクの~』と『寝取られ男のラブバカンス』の2本立て上映を取り上げたときに不満を感じた部分として、1.いろんなことが詰め込まれ過ぎた結果長い2.男性は魅力的だが女性が弱いというふたつの点を指摘した。その点『スモーキング・ハイ』では実時間も2時間を切っているし、そのうえ前述の2作品がラヴコメディというカテゴリーの中で制約を受けていた部分、あまり本筋に関係のない突飛なギャグの連鎖のみでの展開がしづらい、及びどうしても女性を重要な役で出演させなければならないという点からも解放され、のびのびしているようで好感が持てた。
監督のデヴィッド・ゴードン・グリーンはもともとコメディ専門というわけではないようだが、彼の手腕がこの70年代アクション映画(曖昧な言い方だが、作り手側も特に具体的な参照元があるわけではないんじゃないか)のパロディめいた脚本を生かしている。というのは、安っぽい犯罪に関係している人物(ここではマリファナ売買)がギャングの抗争に巻き込まれ、逃亡劇の末、恋人や友人を守るため敵のアジトへ乗り込んでいくという筋書きのことだが、もとになるのがコカインやヘロインではなくマリファナだとなんだか程よくトんだぼんやりした状態で物事は進んでいくのである。といってもひとつひとつのアクションがぼんやりしているのではなく、殴ったり転んだり打たれたりというアクションのひとつひとつは鮮明なのに、登場人物がその鮮明さに気づいていない感じとでも言おうか。確実にこいつ死んだ、というショットを撮っておきながら、実は生きてましたということに何の説明もない。もしかしたらさっきのは見間違いかも的な。だから冒頭の伏線とはまったく関係がないまま(単にビル・ヘイダーが出したかっただけか。彼は良かったけど)この映画が終わりを迎えるとき、通常なら余計なものにしかならないはずのダイナーのシーン、夢を語ったりだとか生きてて良かったねとかお前ら親友だみたいなことを言い合ったりする気持ち悪い会話が、なんだかとても心地よい。全然感動を呼び起こすわけでもなく、ちょっとうっとおしい感じを強調して笑いをとるでもなく、なんか大事なことを忘れているかもしんないけどとりあえず終わったから良しとしようとでもいうような。そこで忘れられているのはもしかしたら彼らの死かもしれなくて、そのことがジェームズ・フランコの顔にオーウェン・ウィルソンに似た哀愁を帯びさせてもいる。