プレミアリーグ リヴァプール対アーセナル 4-4梅本洋一
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とにかくこのゲームのことは書き残しておきたい。今シーズンのプレミア・ベスト・ゲームだろう。もちろんチャンピオンズリーグのチェルシー対リヴァプールの4-4もあった。そして、このゲームの直前にあったFAカップ準決勝でアーセナルは2-1でチェルシーに敗れている。いろいろな意味で両チームとも負けられないゲームということになる。こうした場合、スコアレスドローとか、PKで勝敗が決まるケースがとても多い。だが、現在のフットボールでもっとも先鋭的なチームの類に入るこの2チームは、まさに死力を尽くして点を取りに行った。
リヴァプールはジェラードを欠き、アーセナルはFAカップセミファイナルでアデバイヨール、ファン・ペルシという2トップを失っている。リヴァプールはジェラードの代わりに、ベナユーンとカイトが走り回るだろうが、アーセナルがベントナーの1トップだとすれば、リヴァプール優勢という予想を誰でもするはずだ。
アーセナルは、ソング=デニウソンのセントラルの上に、中央にセスク、右にナスリ、左にアルシャヴィンのスタート。ナスリ→セスク→アルシャヴィンで先制したが、後半に入って、この日に復帰したサニャのミスから失点、やはり右サイドをベナユーンに破られて、リヴァプールの2-1。ここまでなら、別に驚くに当たらない展開だ。だが、バックラインからのフィードをアルシャヴィンが疾走して、左45度から右足を振り抜き、信じられないスピードのシュートがレイナの右を抜いてサイドネットの内側に突き刺さる。2点目。
このロシア人選手はすごい。この日はなったシュートはすべてオンターゲット、そしてすべて得点になっている。シュートを外さないことは、基本中の基本だが、ぼくらフットボールファンは、ノーマークのシュートがゴールの遙か上方にそれ、何度天を仰いだことか! つまりアルシャヴィンは、すごい!3点目、4点目の胸の空くようなシュートをたたき込んでいる。誰かに当たったリフレクションがゴールインするのではなく、どのシュートも早く美しい軌道で、ゴールマウスに吸い込まれていく。ハットトリック+1点のことをなんというのだろう。そんなことは、言葉の方が認知していない。そんなことは起こるはずがない。つまり、これは奇跡的なことなのだ。
だが、4点とってもアーセナルは勝てない。ヴェンゲルは後半開始後の2失点を悔やんでいたが、トーレスの美しいフェイントからのシュートも含めて、アルシャヴィンに89分に4点目を決められても、ギヴアップせずロスタイムに同点に追いついたリヴァプールにも拍手を贈るべきだ。信じがたく高い給料で、過密日程をこなしつつ、モティヴェーションが切れることのない選手たちの驚くべきハードワーク。ゲームが終了しても、しばらく興奮が冷めず、職場に遅刻してしまった!