忌野清志郎追悼山崎雄太
[ cinema , music ]
昨夜、忌野清志郎が死んだ。58歳。
武道館で復活ライブを敢行したのは去年の2月だった。超満員の武道館、観客の平均年齢はいままでに行ったどのライブより高かったが、若いお客さんもちらほら見かけられた。安くはないチケット、「死ぬまでに一度は見たい」と嘯き買って……そういえば武道館にライブに行ったのも初めてだった。お客さんはみなニコニコしながら、しかし時折仔細らしい顔をして連れに耳打ちしたり、気忙しい様子で彼の登場を待っていた。開演に先駆けてスクリーンに映し出されたのは、痛ましくも頭を剃り落とし痩せ、虚ろな目でこちらを見やる忌野清志郎の写真だった。彼が闘病中毎日自ら撮り続けた写真がカットチェンジで次々映されていく。髪がはえ歓声が沸き、自転車に乗る姿が映され歓声が沸いた。
ライブ自体が、病気を患う前と比べてどうだったかはわからない。一曲一曲歌い終えるたびに挟み込まれる一、二分ほどの空白の時間、楽器交換のようでもあるが、そうではないようでもあるそれは、隠さずに言えば、楽しい時間毎に挟まれる空白は、じっとりした不安を育てるには十分だったと思う。だっただったと湿っぽくなってしまうのも、最後に見たあの武道館の空白の記憶が頭をもたげるからかも知れない。覚えず、You Tubeでタイマーズ時代の映像を見てしまう。モンキーズのカヴァーである「タイマーズのテーマ」を歌い終わり、メドレーで次の曲へと移る。テロップでは「偽善者」という曲名が出ているが、曲が違う。どう聴いてもFM東京の悪口を言っている。悪口というか、放送に適さない言葉を連発、「政治家の手先」だとさんざん糾弾したあげく、何事もなかったかのように「デイ・ドリーム・ビリーヴァー」を朗々と歌い上げる。あァ………こういう歌謡曲(?)を歌わせると清志郎は抜群に上手い。いわゆる〈こぶし〉とは反対に、少し高い音から入る独特の歌い方は、非常に愛らしい。若き日の古館伊知郎がアクシデントを詫びる。タイマーズの映像は何度見ても痛快だが、何度か見ると泣けてくる。
キング! キング!
58。早い遅いは僕の歳ではとてもわからない。ただ、いま悲しい。