関東大学ラグビー対抗戦 早稲田対明治 16-14梅本洋一
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いつも通り(?)の早稲田の入りの悪さをついて明治が2トライの前半。「早明戦はちがう」という例年の常套句通り、明治の気迫のタックルと「前へ」!ディフェンスというのは何よりもメンタルなものが勝る、と書くのも例年通り。だが、前半からすでにポゼッションでは早稲田。しかしボールは保持しているもののアタックがかみ合わない。SH榎本の捌きが遅い。山中と両センターの呼吸が合わない──というか、山中はいつパスをするのか誰も分からないだろう──。有田と中田というFWの2枚看板が故障。FBの飯田は合格点以上の出来。よかったことは、結局、1回しか入らなかったが、PGを狙ったこと。はやる相手にタッチからモールという力勝負に持ち込もうとしなかったのは、早慶戦からの進歩だ。
そして後半、中田に代わり星野、そして15分過ぎから、榎本に代わって櫻井、さらに何と山中に代わって吉井の投入。星野はガッツあふれる前進でFWを引っ張った。星野のオヤジは、70年代末期の早稲田のSO。キック中心の選手だったがジャパンにも選ばれたことがある。この選手、プレイスキックができずに、コンヴァージョンもドロップキックで狙っていた変わった人だった。ハーフ団が代わって、一気にラインが動き出す。吉井は決してファンタジスタではないけれども、非常にクラシックなSOとして好感が持てるプレーの連続。小さい体でタックルにもよく行っていた。考えてみれば、山中はその体躯からいって、SOよりもセンター向きではないか。この日の両センターの非力ぶりから見れば、山中センターという選択肢がもっとも適切だったろう。それも13番で使ったらよかった。
ラインが動き始めると随所に瀧澤が顔を出し、渋いプレーやハデなプレーを繰り返す。星野の突進からラックになり、櫻井がすばやく捌くと、センター、そして瀧澤と渡り、タッチライン際を疾走した瀧澤は、タッチ寸前にボールを残し、それを櫻井が拾ってトライ。この日、3番から有田の負傷でフッカーを務めた厳つい顔の理工学部生は、卒業後ラグビーを続けるのだろうか?
2点差の勝利だったが、早稲田には相当伸びしろがあるだろう。アタックが単純で止められやすい。両センターのスキルを上げて、ラインで抜く練習を繰り返せば、explosionできる日もくるだろう。対する明治は、まだチームの体をなしていない。特にバックラインの整備にはまだまだ時間がかかるのではないか。ガッツだけで攻められるのは40分だけ。それからは、どうやって「仕留めるのか」という方法論がいる。吉田には、まだまだ時間が必要だ。